ドワーフとカマスと(2)
カマス
細長い魚で知ってる限りでは二十から三十センチのはずだが。
「よくこの細い竿と糸で上がったなぁ」
メジャーで計ると五十を越えてる。
長さも太さも見た目だけなら大ウナギ
そしてなにより知ってる限り海の魚だ。
「通常のカマスならタモなんて使わないよ」
「そうだろうデカいだろう」
ふんすと無い胸を張った。
小さい。
「まさかもうここ汽水域?そんな訳ないよなぁ」
なんと言ってもまだ山を出たばかりだ。
「キスイ?とはなんだ?」
「海水と淡水の混じわる場所です、そういう所にはこういう魚もいるんですけど……」
魚釣ればその辺の生態とか結構判ることあるけどこれはわからんなぁ。
とりあえず釣れたカマスを締めてクーラーボックスへ。
「殺すのか?」
「殺す、というかこれは締めると言って鮮度を保つ処理ですよ、まず目の上辺り」
目とエラの間辺りに刃物……。
「ナイフ貸して」
「やだ」
「貸して」
「むり」
「子供か」
無理矢理腰から例のナイフをくすねてカマスのエラの上辺りに刺す。
おお、大層な切れ味だこれ。
「で、エラを取る」
でっかいエラだなこれ。
スパッと切り落とし血がドバドバ。
「ちょっと水で濯ごうか」
思ったより血が多いぞ。
デカいだけある。
ついでにナイフも濯いで返す。
「はいありがと」
「もう終わりか?」
「今は気絶してる状態、あとは神経締めを……泣いてんの?」
「泣いてない」
泣くなよ。
また怒られる。
タックルボックスから細長い針金をと取り出してハサミで鼻の頭をチョッキン、空いた穴に棒をデュクシ、そしてトドメに前後にグリグリ。
「おぇ、目が動いてるぞ、というかエラの上刺すだけならそのハサミでも良かったんじゃないのか?」
「……うん」
「おい」
そうだね。
針金を抜いて血抜きと神経締め終わり。
「あとは氷とかあるといいんだけどなぁ」
クーラーボックスとは名ばかりのただの保温ケースだからなぁ今、氷ないし。
「氷作る魔法とかないの?」
「得手不得手というものがあるだろう、私はかれこれ二百年風の精霊しか使役してこなかった」
それを自慢されてもなぁ。
まあここの水冷たいしこれで妥協するかぁ。