平行世界とリュウグウノツカイと(9)
男性についていくと地下だった。
ピコピコと光る機械やなにかの薬剤の入った瓶や試験管。
見るからに研究所って感じだ。
「なんだろうこの気配、誰もいないのに何か感じる」
未来の私に肩を叩かれて指差された方を見る。
巨大なリュウグウノツカイが液体に漬けられた状態で入ってる水槽があった。
「あれは?」
網洲さんが口を開く。
「あれは私の先祖が残した転送装置です」
「転送装置?先祖って」
「ええ、それについて話ましょうか、遡る事二百年ほど前、異世界についての論文を書いた男がいました、私の先祖です」
網洲さんが言うにはその男の理論では異世界に跳ぶ方法はいくらでもあるがこの転送装置が一番安定すること。
その男は異世界に転送する実験の事故で娘を亡くしていること。
そして隣にいる私が言う。
「もうわかるよね、私達の知ってる魔王モースはこの人の先祖」
「じゃあ元地球人?」
「そう、ドワーフの村の水車造ったり、包丁を伝えたりも」
「嘘でしょ」
確かに昔の異世界人が造ったか言ってた様な。
造りが日本人だったし。
「じゃあ悪い人じゃないんじゃ……でも地球を……なんで?」
「まあそれは本人の口から聞いてよ」
自分ながらイケズ。
しかしヒーラさんの言ってた繋がりって、まさか私本人と、魔王の血脈も含むかぁ。
「網洲さんは、私が魔王を倒そうとしてるの、反対しないんですか?」
「……まあ、この研究所は確かに私の興味と趣味で残してるものですが、私は研究で人に害があってはならないと思っています、それに」
「それに?」
「貴女の存在が、異世界の存在を証明してますから」
まあ確かに。
異世界の存在を確認するだけでいいというなら。
でも行きたいとか思わないのかな。
研究者はわからん。
「さあ、こちらへ」
言われるがままに水槽の前にいきリュウグウノツカイの顔の前に行くとギョロリと大きな目で私を見た。
「え!生きてるのこれ」
「ええ、理論上死なないのです、正確には時間が止まっているのです」
言いながら帽子を取りコートを脱ぐ。
研究者の顔は確かに魔王モースの面影がある。
 




