平行世界とリュウグウノツカイと(8)
それにしてもカンちゃんさんのキャラが濃いな。
メイドに変な口調。
「まあ、知り合いに声かけるのはいいけど今日は多分無理だぞ」
「それは困る、こっちは急いでるんだよ、魔王の城の目の前まで行ってたし、あんただって蜜が危険な目に会うのは嫌でしょ」
「それはまあ嫌だけど」
カンちゃんさんが何か思い立ったように人差し指を立てる。
「そうじゃ、あやつはどうじゃ、家近いし」
「家近い?誰だよ」
「ほれ、えーと、名前なんじゃったか、えーと」
「カンちゃんボケたか?」
「キャン言わすぞ、あやつじゃよ、ほら、ハゲの、代々異世界を研究しとる」
数秒悩んだしたカメも同じ人物を思い付いたようで同じように人差し指を立てた。
「ああ!もっさんか!」
「もっさん?」
山本さんか、竹本さんか。
「そうそう、網洲さん」
「は?」
「網洲さん、前に仕事で一緒になった事があってな、異世界の存在を信じて疑わない、網洲さんだ」
モース?
まさかでしょ。
それから一時間後、近くのファミレスに私だけ向かわされた。
もう一人来るらしいけど。
「まじで腕相撲勝ってて良かったわ」
ファミレス分ぐらいの金はさすがに余裕あるよ。
それにしてもまさかカメに助けられる日が来るとはね。
私が知ってるカメより見た目少し老けてた気がしないでもないけど。
「もし、貴女がエナさんかな?」
ドリンクバーでコーヒーだけ飲んでた私に聞きなれない声で話かけて来る人がいた。
帽子を被りコートを羽織っている。
そんなに寒くないけど、冷え性なのかな。
「そうですけど、貴方がカメの?」
「ええ、カメさんの紹介で貴女お手伝いをさせて頂きます、お急ぎという事ですので良ければ私の研究所に……別に下心などはありませんのでお気になさらず」
「ああ大丈夫ですよ、ただの人間では私には勝てませんのでそういうのは懸念してません」
じっと私の顔を見てふっと笑う。
「そうですか、余計な心配でしたな、ではこちらへ」
「ああえっと、もう一人来るらしいのですけど」
「そうでしたか、おっと、あの方では?」
店の入り口を見ると、居た。
多分そうだろう。
「ああ居た居た」
私達に気付いてトコトコと歩いて来る私と瓜二つの顔。
というより。
「……もしかして、この世界の私?」
「うん、正確には未来の私、かな、細かい説明は移動してからね、あの時の私」
当然だけど声も同じだ。
うわぁドッペルゥ。
それにしても未来のってのはどういう事だろう。
車に揺られて数分で網洲氏の研究所とやらに着いた。
というか普通の民家だ。
「普通に家では?」
「ええ、地下が研究所になっているんですよ、行きましょう」
私じゃ無ければ絶対に行かないな。
というか行けない。
不審すぎる。
そして私が二人。
「ねえこっちの私、確認なんだけど、さっきの口振りからすると私は……あの世界で冒険したこの私は過去の私なの?」
「ああ、そうだね、結末だけいうとこれからそっちの私はあの世界に還って、魔王を倒して、やるべき事を全てやって、この地球を創り直す」
「じゃあこの地球は」
「そう、未来の、私が再構築した世界」
「そっか……じゃあこのまま進めばちゃんと」
「うん、世界は救われる、行こう」
それを聞いて安心した。
確かにそんな気はちょっとしてた。
途中で見た本屋のポスター、進撃の魚人三十巻てなってたし。
私が知ってる進撃の魚人は二十巻ぐらいだったはずだ。




