平行世界とリュウグウノツカイと(7)
「なるほど、話はわかった、表がうるさいと思ったら姉ちゃんの仕業だった訳だ」
二十畳程の事務所で、ソファで弟と向き合う。
「おうおう、久々の再会なのに随分な言い様だなカメェ、もっと姉を敬えよ」
「いや、先週会っただろ」
ああ、こっちの世界の私か。
私としては非常に久々な感じだ。
私の知ってるカメもなんか私の知らない所で何かしてたみたいだけど。
それにしてもスーツ似合うな、流石私とほぼ同じ顔。
「まさかあんたが霊能力者、ねえ」
「そういう姉ちゃんもワケわからん力こさえて来たな」
「ま、詳しく説明してしんぜよう」
さっきのOLちゃんがソファに座る私達の前にお茶を出してくれる。
「カメには勿体ないぐらい気が利くじゃん」
「社員であって別に彼女じゃねえし」
なんだか申し訳なさそうにペコリと頭を下げてさがる。
これ好きなやつじゃないの?こっちが申し訳なくなってくる。
「もしかしてまだ蜜の事引きずってんの?」
「うるへーうるへー、そんで?」
「まあ私の力が見えるならこういう説明しても信じるでしょ」
「あー?……なんだそれ、手品か?」
手のひらの上に金属のスプーンを一本、構築する。
「さあ、じゃあこれは?」
さらにティーカップを一つ。
その中に紅茶を一杯。
「おいおい、手品見せに来たのかよワザワザ」
「残念ながらこれは手品じゃないんだなぁ」
ガチャリと背後の扉が開いた。
メイドが一人立っている。
見た目中学生?高校生ぐらいか。
「それは世の理から外れた力じゃの」
可愛いお口から高校生ぐらいのトーンの声でそれが出る。
喋り方は渋い、のか?
「カンちゃん、おかえり」
そう言うカメの隣までカツカツと歩いていきボスンとふてぶてしい感じに座った。
「お主、先週会ったエナとは別人じゃな」
「おっと、貴女は話が早いね、カメには速さが足りない」
「……それは、言うなれば、魔法か?お主の後ろに神……それも邪神……人一人が背負うには随分重い物が視えるぞ」
「ありゃ、そこまでバレてるか」
力を持つ者になら見える、か。
それじゃあ魔王と戦ってる時も隠し玉にならないかもなぁ。
「じゃあカンちゃんさんにも、説明を含めて私が今の今まで経験してきた大冒険をかいつまんでご説明しましょう」
そして小一時間。
「姉ちゃん、ゲームのやり過ぎか?さっき先週会ったって言っただろ、その説明だともう地球は消滅してて……」
「私の能力をその目で見てもまだ疑う?」
「いや、それはそうだけども……カンちゃん、どう思う?」
「全部真実だろうよ、わっちは信じるよ」
「それはどうも、そんでさぁカメ、あんたのお師匠様にここを紹介されたんだけど」
「え?ああ、知ってるよ、師匠から電話あったし、それで、姉ちゃんはどうしたいんだ?」
そんなのは決まっている、私がやることはただ一つ。
「あの世界に還って、魔王を倒す、そんで私の、私達の地球を再生する」
「……でもここだって地球だぞ?なら姉ちゃんのやることもう無いんじゃないのか?」
「ここは私の地球じゃない、今はまだ消滅してるはずだから」
惑星の再生なんて私しか出来ないだろう。
「でもどうやって還るんだよ」
「そこであんたの出番よ、そういう異世界とかそういうのに
詳しい知り合い、いるでしょ?あんたオタクだし」
「はい風評被害~」
「オタクすぐ風評被害とかいう」
覚えたての言葉を使いたがる小学生かよ。




