平行世界とリュウグウノツカイと(1)
「なるほどなるほど?つまりあんたの話が本当なら地球からその異世界に行って、その魔王?ってやつに爪弾きにされて地球に帰って来ちゃった、と」
「まあ、正確にはちょっと違いますけどほぼそんな感じです、スミマセンなんだかお寺まで送ってもらっちゃって」
「いやいや、女一人で居るよりは全然いいだろ、この寺はこの辺りじゃ有名な霊験あらたかな寺だからな」
霊験あらたか、ねえ。
確かに門の前に立つと何だか神聖な物を感じる、気がする。
いや、まあ魔法とか呪いとかそういうのは散々感じ取ってきたけど幽霊は専門外だ。
ただ見た目と気配でわかる、ここは相当広そうだ。
何ヘーホーとかそういうのはわからん。
勉強はてんでダメ。
特に数字。あと英語。
全開の門を男性が先にくぐり近くにいた坊主頭の人に声をかける。
服装的にも坊主ってやつかな。
いやよく知らないけど。
昔お母さんとお父さんがそういう本を読んでた事があるのを見ただけだ。
数回ね。
お坊さんが奥に入っていき、男性が一人私の所に帰ってきた。
「どうでした?」
「ああ、今住職を呼んできてくれるってよ、じゃあ俺はここでお役御免、悪いな」
「いえいえ、こちらこそ、ありがとうございました、こちら少ないですがどうぞ、お礼の気持ちです」
そう言って男性の手を取り手のひらの上にパラパラと大粒の金を出す。
私に出来るお返しはこのぐらいだ。
「え、ええ!?いやいやいや、貰えねえよ!案内しただけだぞ!」
「まあまあ、私が持っていてもどうしようもないので」
「そ、そうかい?じゃあ気持ちとして、貰っておくよ」
そう言ってそれをポケットにしまって寺の敷地から出て行った。
さて、後は私次第か。
ヒーラさんの言っていた繋がり、絆ってやつ、どこまで活かせるだろうか。
「あんた、悪いことしてないだろうね」
声を掛けられて振り返る。
気配は感じていた、おそらくこの寺の住職だろう。
気配が、こう、クリア、透明というか、見えるけど見えないもの的な感じだ。
神聖って感じなんだろうか。
いや、それにしても。
「オカマ?」
「オカマ舐めんじゃないわよ」
数メートル離れていたのに物凄い速度で接近してきて薙刀で私の脳天を狙って来る。
「いやいや、そんな丸見えの振り下ろし流石に当たらな……」
避けたつもりだったのに胴体に突きが入っていた。
「いっぐっ」
驚きと衝撃で少し下がってしまった。
「お礼に金を渡す私と、突然襲いかかってくるオカマ、どっちが悪いですかね!」
「なんじゃあ今の手応え、あんた全身牛の皮か何かで出来てるのか!」
「残念、牛じゃなくて蛇です」
踏み込む足が見えたので私とオカマの間にステンレスの柵を瞬時に構築する。
生えるように組み上がったそれをジャンプで乗り越えてオカマが私に再び襲い掛かってきた。
「ホントに人間か!?」
「本物の鬼畜生に言われたくないわ!化け物!」
失礼な、こちとらちゃんと元普通の人間だわ。
オカマが振り下ろした薙刀が私に触れる直前にそれを分解してサラサラと消滅させた。
ビックリした顔をされたが間髪いれずにそれを捨てて素手で殴りかかってくる。
流石にタリアさん達程の速度では無いが本当に人間かどうか疑うような拳速と威力だ。
オカマボクサーか?
顔を狙ってこず、胴体に激しい連打をくらう。
足元からコンクリートを生成すると一瞬で何かを察して横っ飛びで逃げた。
「どっちが化け物なんだか」
「じゃかあしか!この寺に何の用じゃ!」
「いや、助けて欲しいだけなんだけど」
「だまらっしゃい!」
えぇ……。
いつの間にかツルツルハゲの坊主達に囲まれていた。
「ええ、めんどくさいい、私は戦う意思はないのに」
どう説明したらいいんだこれ。
そんなに邪悪?
何が?
私が?
いや、もしかして。
(うむ、そうじゃよ、気付いたかエナよ、みな妾に敵意を向けておる、発生源がお前だからお前が敵視されとる)
起きてたんですか。
(お主が浮気しないようにさっきの男と歩いとる時から起きとった)
いやじゃあその邪悪ななんちゃらしまって下さいよ。
私の中の声がフッと消えたかと思うと何か気配を感じたのかオカマが拳を下ろした。
しかし周りの坊主達はまだ構えている。
「……あんた……何者?」
「私の名前はエナ、ただの遭難者です」
「エナ……その顔、そう、あんたがね、悪かったわね、突然襲って」
オカマが坊主達を下がらせた。
全くこんなことしてる場合じゃないのに余計な時間使ったわ。




