勇者一行とピラニアと(3)
ゆっくり勇者くんのペースに合わせながら歩く、村の外に出る、湿った葉っぱの上を歩き木々に囲まれて歩く私達以外の気配はない。
「高校の時ならデートみたいってはしゃいでました、こういうの、こういう事態じゃなければ」
包帯ぐるぐる巻きの足を見せてヘラヘラと笑う。
痛そう。
「歩きづらそうだね、ちょっと止まって」
「え?はい」
足に手を当てる。
骨は平気そうだけど。
「ああ、これ、地球で言うところのアキレス腱ですよ、バッツリ切れてるみたいで村の医者に見せたら自然に治癒しようと思ったら半年じゃきかないって言われました、魔法でそれなりに治してくれたみたいですけど……エナさん?」
「なるほどね、大丈夫、もう治ったよ」
筋繊維のデータは山程ある。
「適してるかわからないけどとりあえず地球の日本人の一般成人男性のアキレス腱入れといた」
「はえ?え?は?」
自分で包帯を取り足を確認する。
「ほ、ホントだ!どうやって……治療に特化した魔法なんですか?これがマザーの力?」
勇者くんの怪我をしている場所を上から順番に撫でていき日本人の成人男性の健康体としてほぼ遜色ない状態にまで治した。
「凄い……魔法でも数日は掛かるって言われたのに一瞬で……でも治療する能力で魔王に勝てる見込みが?」
「ふふふふふ、これは正確には治癒系の能力ではありません、体を治す、というより機械を直すの方が近いかな、日本語的には」
「王様とかには適応する能力だと聞いていたのですけど、怪力もその応用だとか」
「うーん残念、二十点、とりあえず不具合ないか歩いてみて」
「は、はい」
ゆっくり一歩一歩歩き出す。
見た感じ痛みとかも無さそう。
やっぱり私の能力の精度が高ければこの位は可能か。
「走れる?」
無言で頷いた後、数メートル走ってこちらを振り返る。
「だ、大丈夫です、なんともありません」
「良かった、じゃあ行こうか」
松葉杖をその場に置いて再び川に向かおう。
「じゃあ、ちょっとお姉さんとデートしてもらおうかな」
「え!は、はい!喜んで!」




