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それでも私は釣りに行く!  作者: naoてぃん
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魔女とヒラメと(15)

「で、でも魔女が子供を誘拐したって話だったじゃないか!裁かれるのは当然だ!今からでも処刑を!」

ああ、ダメだな、この騒動が終わってもこのお母さんとアーヤはあの家には住めない、どうしようもない溝が生まれてしまった。

教祖が悪かった、で納得する者はいないか。

村人達も振りかざした手はただでは降ろせない。

教祖が思い出したかの様にニヤリと笑って村人達を背に魔女を指差す。

「そ、そうだ!どうせ子供を誘拐して生け贄にでもしていたんだろう!被害者のフリをするな!悪魔め!」

数秒前の泣きすぎてシャックリ出そうな顔はどこへ行ったのやら、ドヤ顔だ。

その時、教祖の後ろからじゃらじゃらと金属の音が聞こえて来た。

「は、はは!私の勝ちだぞ魔女よ!今度こそ処刑してやろう、さあハンター達よ!この女を処刑しろ!」

振り向くとそこには数名の黒い鎧の騎士が数名。

「は?わ、私のハンター達は?」

その騎士達が縄に繋がれた手錠に繋がれた数名の見慣れた顔を引っ張り出した。

ハンターだ。

「我々は王都騎士団派遣隊である、魔王討伐の為近くを通り掛かり暴徒を鎮圧した」

「ま、まて!王都の騎士だと!?そいつらはギルドに正式に登録しているハンター達だぞ!王都は管轄外だろう!手出しは無用だぞ!」

「否!騎士団長の命により是等を逮捕するものとする!」

デオさん近くまで来てるのか。

「そして教団の教祖を名乗る不届き者、貴様も調べたぞ、貴様が拠点としている魔都に行き貴様の悪事、全て暴いた!」

魔都っていうのか、街の名前。

ハンター達のさらに後ろから騎士達に囲まれて子供達が数名出てくる。

村人がボロボロの衣服しか着ていないその子供達に駆け寄っていく。

つまり誘拐の犯人は。

「この子供達は奴隷商人に売られていた、商人達から貴様の事も聞いている、観念しろ!」

「う、うぐぐぐ!」

私は魔女の手を引き少し下がって下腹部に手を当てる。

命の気配だ。

「この命、望みますか?」

ゆっくりと首を横に振る彼女の胎内の未熟な細胞を分解する。

この命に罪はないけど望まれないからね。

さよなら。

あと私は気になってる事がある。

「なんでこんな事を?人間達の中だけで暮らしてたら魔女と接する機会すらないでしょ」

「ぐ、そ、それ、は」

騎士に後ろから押さえつけられて膝をつく。

「い、いででで!もっと優しくしろ!」

「悪人に優しさなど不要!」

結構ストイックに正義貫くタイプの騎士達なのかな。

「エナ!終わったか?」

「あ、タリアさん」

走ってきたタリアさんに騎士達が敬礼した。

「丁度お前達がいて助かったぞ」

「はっ!有り難きお言葉!団長にお伝えしておきます!」

「タリアさんこの人達は?私聞いてませんけど」

てっきりウチのパーティーだけでやってるかと思ったけど。

「ああ、こいつらは騎士団長に就任した者の直属の戦闘集団だ、前は私の部下だったが今はデオの部下だな、王都に魔王の手下の魔物が侵攻してきたから魔王を討伐にいう命令を下されたらしいぞ」

「デオさんは?」

「奴は私に挨拶だけして魔都と呼ばれる街に向かった」

相変わらず硬派は人だ。

そして大した信頼関係だ。

しかしデオさんが直接動いてるんじゃ王都の防衛は終わったのかな。

もしそうならそろそろ奴が来そうだな。

サイコレズが。

「まあ、大体わかった所で最後の話、聞きましょうか、教祖、なんでこんな事を?」

「…………から」

小声で聞き取れなかった。

「なんて?」

「アーヤは俺の婚約者だからだよ!」

「……いやいや、ワケわかんないし」

「昔魔都で見かけた時に一目惚れしたんだ!だからパパに頼んで結婚出来るように頼んだんだ!それなのにそこの魔女は……」

魔女の首を横に振る。

「いくら積んでもイエスと言わない、だからその女の立場を無くしてやろうと思ったんだ!二人で暮らしてるらしいって聞いたから母親が迫害されて居なくなれば、堕とせると思った」

とんでもないボンボンって事かな。

「俺は昔からなんでも欲しいものは手にいれて来た、物も、女も、欲しくなった物は全部手にいれないと気が済まないんだ、それなのに何をしてもそいつが娘を、アーヤをくれないから!」

呆れた。

アホらし。

と思っているとカツカツとアーヤが人混みの中から現れた。

今の話を聞いていたんだろう。

誰が見てもわかるブチギレだ。

「ア、アーヤ!我が妻よ!今なら快く許してや……」

教祖の胸ぐらを掴んで右手を大きく振りかぶる。

「ウィンディ!フレイヤ!サンダラ!グライバ!アクエス!」

一つ唱えるごとにアーヤの手が強く輝いた。

その手で特大のビンタをかます。

「五大元素スマッシュ!!」

五大元素スマッシュ……。

スローカメラってこういう時に使うんだろう。

騎士は直前に手錠から手を離していた。

直撃した教祖が横に回転しながら壁に激突、貫通、木をなぎ倒し砂煙が収まる頃には力なく横たわっていた。

魔女こわ。

五大元素ってそういう使い方するものなの。

「ママ!」

「アーヤ!」

おっと、感動的な再会だ、部外者は離れておこう、とタリアさんに合図。

二人でその場を離れる。



「皆は?」

「ああ、もう準備出来てるんじゃないか、モイラが出発の準備を進めておくと言っていたぞ、お、ほらあれだ」

ブロロロロというエンジン音に視線をやる。

「お、結局車かぁ」

全方面金属の盤で囲まれたそれは。

装甲車。

ゴッツイなぁ。

『はいはーい!お待たせしましたー、空中だと撃ち落とされる危険性があるので考慮して陸路にしました~、アーヤちゃんから教えて貰った防御術式をふんだんに使った特別仕様で~す!』

装甲車からモイラの声が聴こえた。

適応が早いな。

まあでも確かにこれなら今までで一番安全に素早く魔王の城に向かえるかもね。



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