魔女とヒラメと(14)
という訳で今私だけ一足先に村に戻って来た。
今頃皆でバチボコにしてるだろう。
私の目標はアーヤの母親の救出と教祖の悪事を知らしめる事だ。
「あらあんた、どこ行ってたんだい?魔女狩りを見に行ったのかと思ったけど」
村のおばちゃんに声を掛けられた。
「ええ、私の相方はそっちに行きましたけど私はちょっとその辺プラプラしてました」
「あらそうかい」
もしかして私の背格好とか目立つかな。
おばちゃんと別れてこっそりと教祖の家に辿り着く。
まあ村人も少なくて助かった、やりやすい。
空き巣に入ったという村人に聞いた通り裏口があった。
誰もいない。
なんでも彼曰く「地下室があってそこに牢屋があって魔力を封じる特殊な作りでそこに閉じ込められている」らしい。
アーヤが言うには魔力の循環が止められると魔女は呼吸すら辛くなるらしい。
陸に上がった魚みたいなもんだろう。
扉ごと分解、侵入に鍵を壊す必要なんてないのだ。
音もないし。
家の中に入ると確かに下の方に人の気配を感じる、でも生体反応が薄い、相当弱っていそうだ。
地下への階段を探すのも時間が掛かるし生体反応の真上に立って床を分解する。
「お、いたいた、貴女、森の魔女ですよね、助けに来ました」
「だ、誰ですか……」
呼吸も弱い、奴隷の様な薄い服でもしかしたら性的な拷問とかもされてるかもしれない。
アーヤに確かにしている、銀髪の美人だ。
「娘さんの友……仲間です、ちょっと待ってて下さいね」
「ここは危険です、私はいいから、逃げて」
「いやいや、今誰もいませんしそろそろ私の仲間も……」
「ダメ!」
言いながら梯子を構築していると彼女の叫びの後で私の体に鎖が巻き付く。
「鎖!?どこから……」
壁中に所謂魔方陣の様な物が大量に現れてそこから伸びた鎖が私をぐるぐる巻きにした。
罠か。
侵入者を自動で捕らえるやつか。
「ああ、ダメ、このままではあの人達が帰ってくる、それは魔力を封じる鎖です」
そういう彼女の手にも同じ物が付いていた。
「なるほど、でも言ったでしょう、大丈夫だって」
「……え?」
分解も気配の感知も出来なくなってるな、でも問題ない。
「私が最後の希望です」
私の腕力で鎖が弾けて跳んだ。
作りかけの梯子をちゃんと作って牢屋に降りる。
魔女を抱き起こすとびっくりするぐらい軽い。
成人女性の重さじゃないな。
痩せこけてる、とも言えるだろう。
「大丈夫ですか、これを食べてください」
パンを構築して口に入れるとゆっくりと食べた。
ちょっとしたら牛乳も作ってゆっくり飲ませる。
「ありがとうございます、もう何日も食事を摂ってなくて」
「いいんですよ、さっさとこんな所脱出しましょう」
手に付いている鎖も分解。
なるほど、こういう構造か、いい物を手に入れた、私の構築のレパートリーに追加だな。
それはそうとさっきから生臭い、あまり長居したい場所じゃないな。
その前にこの服をどうにかしないと。
「ちょっとお洋服失礼しますよ」
一瞬で分解してアーヤと同じ形のローブを生成。
彼女をおんぶしながら梯子を登る。
ガチャガチャと扉を開く音が聞こえたかと思ったら玄関が開いて教祖が肩で息をして立っていた。
「あ、おかえりなさーい、案外早かったね」
「な、なんだ貴様!旅人って女じゃないか!ここで何をしている!魔女!解放したのか!」
「へへ、あんたの悪事を暴きに来ましたよ」
鎖を無くしたからか魔女も大分元気な顔になってきた。
「く、くそ!あいつらの仲間か!」
「ああ、因みにあのエルフは王都の騎士団長ですよ、元ですけど」
「な、なん……でぇ?どこで私の計画が……」
教祖の後ろから村人がワラワラと集まってくる。
「あ、あの、教祖様?ハンターの方々は?魔女狩りは?」
「あ、あ、その、魔女狩りは……失敗した」
村人も命が掛かってる(と思ってる)から魔女狩り失敗したじゃ済まされないだろう。
堕ちたな。
ふざけるな、なんてことしてくれた、どうするんだ、責任取れ、口々に教祖にそんな罵声を浴びせる。
内一人が私と私が背負ってる魔女に気付いた。
「ま、魔女!なんで!処刑したって、教祖様!どういう事ですか!」
「そ、それは……」
私の背中から降りてゆっくり歩いて教祖の前まで魔女が行った。
「私は、死んでいません、あの処刑の瞬間にこの男が裏で救出して、あれから毎日の様にここの地下でこの男と、その部下達の慰み物になっていたのです、それをあの方が助けに来て下さいました」
やっぱりそういうのもあったか。
許せないな、同じ女として。




