魔女とヒラメと(13)
「モイラって子は偉いですね、声と半透明の体しか見えないからてっきりゴーストかと思いましたけど」
「あー、まあ思念体って意味じゃある意味幽霊みたいなもんだけど、本体は他にいてホログラム……えーっと、映像だけが一人歩きしてるみたいな感じだし、説明難しいな、まあ視覚で理解しやすい様にしてる?みたいな」
「勤勉だし、理解も早いし、ケンリーとは大違いですよ」
それを後ろで聞いていたヒラメが宙を漂いながら私達の方に文句を言いに来る。
「シンプルな悪口やめろや、じゃあせめて魚と契約すんのやめろや、もっと大きくて賢い個体選べば良かっただろ」
「いやいやだって私より賢くて強い子と契約したら反旗を翻された時困るでしょ私が」
「馬鹿にしすぎだろ、というか裏切られる前提で契約すんなや」
コントかな?
「仲いいねえ、ところで村人達から何か聞けた?」
魔女と使い魔の視線がエルフに向く。
「任せろ、これでも元騎士団長だからな、尋問拷問なんでもござれだ」
王都式拷問術、一体何を。
「面白い事が聞けたぞ、てっきりアーヤの母親は殺されたかと思っていたがな、というか表向きは殺された事になっているらしいが生きているらしい、教祖というやつの家に拉致されているらしいぞ」
なるほど、死んだと思った母親が生きてたからアーヤがなんとなく嬉しそうに見えるのかな。
あの家か。
「表向きって事は村人達には殺した様に見せてるって事ですよね、なんであの男達が知ってるんです?」
「ああ、あいつらの中の一人が一度その家に空き巣に入ったことがあるらしくてな、その時に見かけたらしい、その話も魔女本人から聞いたそうだが特殊な牢獄に入れられて力を奪われているらしい、他の男も誘拐をしたりイタズラをしている教祖の部下を見たらしい、つまりそういう事だ」
「なるほどねぇ、その村人達は?」
「向こうでオネンネだ」
死んでなければなんでもいいけど。
生命反応はあるし生きてはいるだろう。
「じゃあ今ちょうどその教祖がここに向かってるんで、小芝居挟んでその家にちょちょいと侵入しますか」
「何かいい案があるのか?大人しく実力行使でねじ伏せればいいじゃないか」
エルフ目ゴリラ科。
「私達はここを旅立てばサヨナラバイバイですけどアーヤ達には生活がありますからね」
「まあそうだな、アーヤが一人ならこの旅に一緒に来てもらっても良かったが親も生きてたとなればな」
なるほど、離れるのが寂しいのか、一晩で何があったんだ。
体の関係でも持ったか?
「まあいいさ、小芝居とやらは任せるぞ」
「あいあいさー」
さあ、ショータイムだ。




