魔女とヒラメと(12)
およそ四十分後。
魔女の家前。
「居るのはわかっているぞ!魔女よ、出てこい!」
家の前でハンター達が各々武器を構えた。
「出てこないのならこの家を破壊してでも……素直でよろしい」
家から家主が一人で出て来る。
魔法の本を片手に。
「うむ、相変わらず美しい娘だ、どうだ?今からでも遅くはない、私の妻にならぬか」
その本を男に向けて構えた。
「おお怖い怖い、だが私にそんな態度で本当にいいのかね?やれ」
ニタニタした嫌らしい笑みを隠さず、手を挙げて後ろのハンターに合図を出す。
男の後ろにいたハンターが二人、魔法の杖を構えて呪文を唱えると魔女の周囲を光の輪が囲い縛りつけた。
「なんっこれっ魔力がっ……吸われ」
「そう、それこそ貴様の母を殺した魔女殺しの魔法、貴様もあの場所にいれば良かったのになぁ!はっはっはっ!んん?なんだその反抗的な目は」
「そう、これでママを」
「そうだとも!最期まで私の言うことを聞かなかったからな、だがお前はまだ助かる、大人しく私に従っていればな」
力ずくで光の輪から抜け出そうとするが力めば力む程体に食い込み自身を傷付ける。
「そう抗うな、悪い様にはしない、さあ」
さしのばされた手に憎悪を込めて魔女の唾を吐きかけた。
「こういう時なんていうか、あるエルフから聞いてるの」
憎しみと、苦しみと、悲しみと、そして呪いを込めて。
「クソ食らえ」
「……そうか、ならば死ね」
「無理ね、あんたじゃ私は殺せない」
突如、魔女を締め付けていた魔法の輪が弾けた。
数分前。
「朝起きたら人間の男達がいると思ったらそこまで話が進んでいたのか、ビックリしたぞ」
「いやぁスミマセンねぇ、タリアさんとほぼ丸一日顔会わせなかったの久しぶりじゃないですか?」
「お前私の事好きだなぁ」
逆だろうよ。
私の事大好きエルフめ。
サイコレズに刺されろ。
「それで?そろそろ人間達が来るのか?」
私とヴィヴィは超特急でこの家に帰って来たが向こうもそろそろ来るだろう。
とりあえず来客の相手は家主にして貰って私達の仕事はその後だ。
村人達の話じゃ魔女の力を無力化する魔法使いがいるとかなんとか。
「そろそろ来ますよ、ジロとモイラは?」
『聞こえてるよ~、ジロさんもこっちにいまーす』
「よし、モイラ、修理終わってる?」
『ほぼ完璧、いつでもベースを構築し直せる、なんだったら強化も出来る、もう負けないよ』
「一日見ないだけでそんなに強くなる?」
『魔法の技術を借りたの、ママの方にも応用データ送るね』
私の頭の中に魔術に関する情報が次々流れて来る。
データ量が多すぎて馬鹿になりそうだ。
 




