魔女とヒラメと(11)
「お、俺達をどこに連れていくつもりだ」
「ん?んー魔女の所?」
「生け贄にでもするつもりか!最初からそのつもりで!」
「いやいや、そっちからやってきたんでしょうよ、大人しく寝かしといてくれればいいものを」
明日の朝までぐっすりなつもりだったのに。
「わかってるぞ!最初から俺達を誘き寄せる呪術かなにか使ってたんだろ!」
「いやいやそっちの自由意思でしょうよ、本気で殺したければ昼の内に私一人で村ごと消滅させてるよ、さっきの蛇の群れ見たでしょ」
「……それは、まあ」
はい論破。
反論が無ければ私の勝ちだが?
完全に黙ったから私の勝ちだわ。
二十分程歩いてアーヤの家に着いた。
ロープをヴィヴィに渡して家をノックしようとしたが屋根の上に気配を感じて見上げるとアーヤが足をプラプラさせながら月を見上げていた。
テレビのワンシーンみたいだ。
「ウィンディ」
私達に気付いたアーヤがぴょんとひとっ飛び私の目の前に、衝撃もなくふんわりと風を纏って着地した。
昼間見た風の魔法か。
流石本職の魔女、タリアさんより出力の調整が上手い、という所か。
「おかえり、って訳じゃなさそうだね、村の人達?」
「そ、寝込みを襲われたから丁度いいと思って話を聞くために捕虜にした」
アーヤを見て男達が怯える。
まあ私達の機嫌を損ねたら即死だしな。
「話?」
「色々あるでしょ、あれやこれやが、ね?」
「ああ、そうね、聞くだけ聞いてみましょうか、時間の無駄だと思ったら」
アーヤの指先に黒い光が集まりそれがすぐ近くの木に一瞬の内に直径十センチ程の風穴を開けた。
「こうなるけどね、嘘はつかない事ね」
男達が全力で首を縦に振った。
次の日。
私とヴィヴィだけで村に帰ってきた。
昨日のおばちゃんは見当たらないけどなんだか村人達が騒がしい。
近くのお姉さんを呼び止める。
「あ、あの、何かあったんですか?」
「ああ、貴女達昨日いた旅人さんね、村の男達が朝起きたら消えてたのよ、だから今それぞれの家で確認中、もしかしたら魔女の仕業じゃないかって」
あ、察し。
「ああ、それなら……」
「魔女の仕業である!」
私の声を遮って後ろから若い男の声が聞こえた。
うるせえ。
「嗚呼!教祖様!」
女性のその声に村人達が教祖様、教祖様と集まってきた。
振り返ると小太りで背の小さい男が手を後ろで組んで偉そうに突っ立っていた。
高そうな服を着て、背後に若いムキムキのお兄さん達を引き連れて。
「そなた達、旅の者だな、既に聞いている」
「ど、どうも」
見た目私より少し年上ぐらいだろうか。
私の顔を見た後、チラリと胸を見た気がした。
慣れっこだけど。
それでいいのか教祖。
教祖も人の子。
「ふむ、聞け、私はこれよりこの者達を引き連れ魔女の討伐に向かう、この者達は選りすぐりのハンター達である、私が雇ってきた」
ハンター、ああ、ギルドとかいうなんとかかんとかの傭兵達が。
それは聞いたな。
「魔女を討伐の後」
私の元へトコトコ歩いてくる。
「私の妻にならないかね?」
「生言ってんじゃねえぞハゲ、あ、間違えた、遠慮しておきます」
「ふふ、照れずともよい」
いやホントにタイプじゃないから。
踵を返してハンター達の方へと戻り、再び村人達に向き直る。
「魔女の最期を見たい者は共に来るがいい!今日でこの村に平穏が訪れる!拐われた者達も必ず私が助けよう」
大した自信家だなぁ。
そんなにそのハンター達が強いのか、自分自身も結構強いのか。
高笑いをしながらハンター達を引き連れて森へと歩いていく。
さて、じゃあ予定よりすこし早いけど私達も動き始めるかな。
ヴィヴィと目をあわせてこっそりと村から離れた。




