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それでも私は釣りに行く!  作者: naoてぃん
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魔女とヒラメと(10)

深夜、寝ていたらテントに近付く気配で目が覚めた。

隣にいるヴィヴィは寝てる。

起こすべきかな。

この気配は……。

「人……?」

タリアさん達じゃない。

人型の魔物、って訳でもなさそう。

多分昼の村の人間だ。

男ばかりかな?五人ぐらい。

真っ直ぐこのテントに向かっている気配だ。

まあともかくヴィヴィは起こしておくか。

何かあって逃げられないじゃ困るし。

隣を見ると既に目を覚ましたヴィヴィがパッチリとした目で私を見ていた。

「うぉビビったぁ、ホラーかよ」

「悪いわね、あんたの動きで起きちゃったわ」

睡眠が浅いのかな。

いや、いつもならメンバーの中でも一番眠りが深いはずだ。

それにしてもそんな全開で目開かなくても。

「何かあった?感知?」

「う、うん、真っ直ぐ近付いて来るよ、多分村人が五人かな」

「逃げる?」

生憎とヴィヴィの荷物はアーヤの家に全部置いてきてあるし昼間のリュックはもう分解してるしテントだってすぐに分解出来るが。

「まだわからない、明確な敵意もまだ感知出来てないし」

「いや、女二人で寝てる所に男複数人で迫ってたら悪意でしょうよ十割」

「なるほど」

流石にサバイバラーなセイレーンはそこのところわかってるな。

私のはあくまでもアウトドアな趣味の領域だし。

「で、距離はどんなもんなの?」

「多分、五分もしないでここに到着すると思う」

多分徒歩だ。

テントの周りに他に気配はない。

逃げるなら今のうちだ。

戦闘するにしてもテントからは出ないと。

話し合いってことは無いだろうし、身体目当てか金目当てか。

金目の物なんて無いけど。

「全く、寝不足は美貌の天敵だっていうのに」

「地上は抑えるから、逃げるか隠れてるかしてて」

「分かったわよ」

文句を言いながらヴィヴィがテントから出てフワリと軽く飛び上がる。

木々を越えて何秒もしない内に見えなくなった。

まあそっちはそっちで自分で判断して貰うか。

私もテントから出て一つ、伸びをした。

月が綺麗だ。

聞いた話によると魔界は月の魔力が強くなるらしい。

原理はわからないが例の大結界がレンズの様な役割を果たしているとか?

あと先日風穴開けた結界ももう自動で直っているらしい。

「おっと、気配が近いかな」

女一人、普通なら危ない所だけど。

残念だが私は普通の女の子ではない。

チラチラと人の気配がする方角に火の光が見える。

ランタンみたいな物だろうか。

草を踏み抜く音、枝が折れる音、ケラケラとした談笑の声。

その五人の気配から一人だけ離れてテントの側面側に周り、背後に周った。

そして動きが止まる。

舐められたもんだ。

正面から四人がのっそりのっそり現れた。

「あらぁ、お姉さん一人?確か昼間村にいたよねえ、危ないよぉこんな所にさぁ女性一人で、お友達は寝てるのかな?」

私を見てるというならヴィヴィも見てるか。

「こんばんわ、何かご用ですか?見回り?」

「いやね、何でも女性二人で魔界を旅してるっていうから、危ないな~って、ちょっとお話したいな~って若いのが四人も集まってね」

五人だろうが。

ニヤニヤとした嫌らしい笑いだ。

月明かりで漸く顔までハッキリ見えたが全員若い、チャラついた感じは全員あるが見た目二十歳前後って感じだ。

そして私に向けられてるこの気配の種類、ピンクの感じは、性欲。

バラすのは簡単だけどなぁ。

「ま、そのテントの中で仲良くしましょうよ、ね」

露骨に私の胸に視線がいく。

全く私のダイナマイトバディがこんな時悩ましい。

「いえいえ、大丈夫ですよ、私達それなりに強いので」

「まあまあ、そう言わないで、油断してると危ないよ、もしかしたら暴漢に襲われちゃうかもよ!」

私の背後から突然五人目が飛び出してきて私を羽交い締めにして口に布を当てて来た。

薬物か。

「おら!抵抗すんな!大人しく……」

これまたチャラい感じの男で、そいつの襟首を見ずに掴んでその仲間達の方へと投げ飛ばす。

ついでに今当てられた布を空中で分解、これは睡眠薬、の効能と同じだ。

「ぐ、ぐえぇ、な、なんだこの女!なんて馬鹿力だ!」

「丁度良かった、あの村の人間ならあの村に詳しいよね」

投げ飛ばされた男とドミノ倒しになってた奴らが立ち上がり私に向き直る。

臨戦態勢だ。

「大人しくヤられてろよ!女はよ!」

「ふぅ、やれやれ、とりあえず逃げられない様にしないとね」

男達と私を囲う様にして巨大な檻を作った。

ステンレス製。

ヴィヴィは檻の外にいるか。

突如現れたそれに驚く男達。

「な、なんだよこれ!聞いてねえぞ!」

「バケモノ!人間じゃねえじゃねえか!」

「ひ、ひぃ!助け、助けて!殺さないで!ごめんなさい!ごめんなさい!」

口々にそんな事を言う。

刃向かう者、怯える者、命乞いをする者、そんな者達に救いを与えるのもマザーたる私の仕事だ。

「まあまあ、ちょっと聞きたい事があるだけだから、その前にお兄さん達、蛇はお嫌いかな?ハイドラは?」

私の体を通して頭が複数ある巨大な蛇の形をしたオーラが拡がっていく。

これをやるのは山賊の時以来だな。

それでも只の人間を脅かすだけならこれで充分だ。

私の力で殴ったら内臓潰れる。

苦玉は潰さない様に調理しないとね。

全員の足元をチェーンでガチガチに固定して逃げられなくした。

「ま、魔女!お前!魔女の仲間だな!」

「うーん、まあ、遠からず近からず」

私のハイドラのオーラにあてられたのか、森の中からこの檻に向かって様々な蛇が向かって来ていた。

檻の周りは数秒で蛇だらけ、その中には大型のもの、それこそハイドラも見えた。

抵抗していた男達も絶望を感じたんだろう。

ヘナヘナと力無くその場に崩れてしまった。

やがて全員が命を乞い始めた。

「殺さないよ、ちょっとだけお話、出来るかな?」

私がハイドラのオーラを消すと蛇達もぞろぞろと帰って行く。

これはいい事情聴取が出来そうだな。




檻も消して男達の手に手錠をはめて拘束、そのままアーヤの家の方へと歩きだす。

「あ、ヴィーヴィー、いいよー」

見ていたヴィヴィが帰ってくる。

「忘れてたでしょ」

「忘れてないよ、そこまで薄情な女じゃないって私だって」

本当に薄情なら今頃この男達は存在も許されてないからね。

諦めて命を私に委ねた男達の手をロープで引いて歩みを再開した。

警察ごっこもしくは電車ごっこ。

いや、電車ごっこは大きな輪でやるやつか。


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