魔女とヒラメと(8)
「ヴィヴィも行こうよ」
「えぇ、私はいいわ、別に好きじゃないもの釣り」
「ええーじゃあこの魔物がいるっていう森に一人寂しく残る?」
「まあ野宿は慣れてるわよ、あんた達と会う前は多かったし」
「あ、その話聞きたーい、道すがら聞かせてよヴィヴィの冒険」
「しれっと私も釣り行く流れにすんじゃないって、まあ面白くもないわよ」
そう言って立ち上がる。
結局来てくれるんだ。
人と話すの好きだし何より寂しがり屋だからなこの鳥類。
いや魚類なのかな。
わからんなぁセイレーン。
体を作り替えるのって私がやる再構築と近い感じだろうか。
海モード空モードとは言ってたけど。
私も立ち上がり二人でテントを出た。
そんな長時間テントに居たつもりも無いが案外真っ暗だ。
「じゃあ私が郷を出た話から始めようかしら」
「へい待ってました」
私の手にランタンを構築、地球製だ。
「旅の始まりはそうね、もう五年くらい前かな」
「え?ヴィヴィって実年齢何歳なの?」
「この間十八になったばっかよ」
「人間でいうと?」
「十八だって言ってんでしょ、どういう意味よ」
ああ、人間でも妖怪でも同じか。
妖怪じゃないや。
そんな歳だったっけ、知らんかったわ。
「気を取り直して、セイレーンの郷ってのはとある島にあるんだけど」
…………
………………
その島で私は産まれた。
母親は当然セイレーン、父親は人間らしい、らしいというのもセイレーンは卵から産まれるし好みの人間を見つけたら種だけ強引に奪って子をなす。
そしてセイレーンは女しか産まれないのだ。
理論上相手が人間じゃなくても子供は出来るらしいがセイレーンは人間を好む。
理由は知らない。
周りを海で囲まれた小さい島、そこの近くに船が通ると魔力の込められた歌で船乗りを誘惑し、狂わし、拐ったりするのだ。
私には幼なじみが一人いた。
産まれた時からずっと一緒で、将来は一緒にセイレーンとしての伝統を守りながら成長していくものだとずっと思っていた。
「ヴィヴィ、私決めた、魔界にいく」
そんな私の想いは彼女のそんな一言によって覆された。
セイレーンは一生をこの島で過ごすもの、ずっとそう思っていた。
「魔界って、あの魔界?確かにたまに旅に出るセイレーンはいるし禁止されてる訳じゃないけどなんでそんな危険な所に行くのよ」
水色の私の髪と対照的にオレンジ色の髪の彼女、これは二人共母親からの遺伝だ。
「人間界の人間は弱い、弱い人間の遺伝子で子供作っても弱い子供しか出来ない、それじゃセイレーンは衰退する」
「いや私達まだ十三だよ?早いって」
「もう決めたの!止めないで!」
こうなっては彼女はもう私の話なんて聞かない。
昔からそうだ。
そうして何日もしない内に彼女は母親にだけ伝えて旅に出た。




