魔女とヒラメと(5)
「お前にコミュニケーション能力がそんなにあったなんて知らなかったな」
「無かったらいきなりエルフの群れのど真ん中で自己紹介とか出来ないでしょ」
「肝が据わりすぎなんだよ」
良く言われてたわ。
芸能界に足突っ込んだおかげかな。
タリアさんとジロとモイラが家に残り私とヴィヴィで教えられた方角に向かって歩く。
なんで私達なのかというとチーム平和主義だからだ。
モイラはともかくあの二人は蛮族がすぎる。
すぐ暴力と切れ味で解決しようとする。
蛮、蛮、蛮族、一本蛮族。
あとヴィヴィがたまに空を飛んで方角を確認出来るし。
今は鳥足で歩いてる。
「ねえ、なんで急に迫害され始めたのかな、あのアーヤって子とその母親」
「うーん、なんだろね、その村に突然来たっていう組織から見たら邪魔だったんじゃない?」
「だから村人唆して殺すまでいく?人間って怖いわぁ」
地球でも古くから魔女狩りってのはあったらしい。
モイラと離れる前にデータベースだけ見てきた。
「セイレーンは喧嘩とか揉め事とかしないの?仲良し族?」
「うーん、全くない訳じゃないけど人間より仲良いと思うよ、個人差はあるけど、繁殖力とか生命力があまり強くない種族だからねえセイレーンは人間の男誑かしてその魂食べたりなんだり」
「おっかな」
「そうかなぁ、同族で殺しあってる人間のがよっぽどだと思うけどなぁ」
「ぐうの音も出ません、でもなんで私の事は殺そうとしないの?」
「目の前で巨大なモンスターを次々と分解していく化け物にただのセイレーンが勝てると思う?」
巨大なモンスター……。
鯛とかシャコとかタツノオトシゴとかかな。
「それにあんたはもう忘れてるかもしれないけど出会った初日で目の前で素手で石粉砕されて脅されてるからね」
そんな事あったっけ。
覚えてない。
「なにその惚けた顔は」
「はて?」
「可愛いと思ってんの?」
「蜜なら秒で堕ちるんだけどなぁ」
ダメか。
しばらく歩くと村が見えてきた。
私の探知的にはそれなりに広い村だ。
人もそれなりにいる。
おっと旅人設定でいくつもりだからせめて旅人の格好しよう。
「ヴィヴィ」
「ん?」
私とヴィヴィの背中に適当な旅セット入りのリュックサックを構築した。
「うわ、なにこれ、動きづらい」
「旅人のふりして内部調査しよう」
「まあいいけど」
村の入口で早速第一村人。
ちょっとボロそうな服装で中世ヨーロッパって感じの服だ。
まあそんな訳はないけど。
地球じゃないんだし。
「もしそこの人、私達は旅の者なのですが」
人の良さそうなおばちゃんがニコニコしながらゆっくり歩いていた。
「まあ、この辺は魔物も多くて大変だったでしょう」
全くいなかったよ。
いや隣にいたわ。
「この村は今特別な結界に護られるから安全ですよ」
まーた結界かよ、もう慣れたよ。
あれ?そんなのあったかな。
「彼女は魔物なのですが、大丈夫でしたよ」
「あらあら珍しいねえ、邪悪な者を弾く結界らしいから、きっと心の綺麗な魔物さんなのでしょうねえ」
ドヤ顔すんな。
鼻の穴にピーナッツ突っ込んで羽根むしりたい。
「あんた今酷いこと考えてない?」
「付き合い長いからそのぐらいの考えは読めるようになって来たか」
「結界に弾かれればいいのに」
人間には効かないんじゃないかな。
知らないけど。




