魔女とヒラメと(4)
「まあでもさっきの感じからすると戦闘にはあまり役に立たないんですね、ふわふわしてるだけだったし、ヴィヴィの飛び蹴りで一撃だったし」
ただヴィヴィの体重とキック威力で内臓出なかったのは耐久性はいいのかもしれない。
「はぁ?本気出してないだけに決まってるだろ、お前らなんて何人束になってもアーヤには勝てないんだよ」
エルフと人狼のセットといい勝負してたと思うが。
「このアーヤはな、間違いなく魔女の純血で非常に強力な魔法を手足の如く操ることが出来るんだぞ、ただ、ただメンタルが、メンタルが焼き菓子の如く脆いだけで、そう!メンタルがその辺のガキンチョレベルに弱いだけで、すぐ泣くしすぐキレるしそのクセ押しに弱いしすぐ凹む」
「余計な事言うな!」
親指で中指を押さえピンッとデコピンの要領で弾く、ただ違うのは弾いた中指が金色に光ってたぐらいだ。
そのスーパーデコピンでヒラメがバッティングマシーンから射出されたかのような速度で壁に叩き付けられた。
「お、おおう、ヒラメに対する当たりが強い」
「こう見えてケンリーはただの魚じゃないんです」
いや普通の魚は空飛ばない。
「ほら、サイズの割に魔力角もないでしょう?魔女の使い魔は直接私達魔女から魔力を供給出来るから自然界からエネルギーを吸収する魔力角がいらないんです」
そういえばそんな設定あったわ。
忘れてた。
魔界に入ってから見てきた魚達はどれも角の無いものばかりだったな。
「魔界では空気中に含まれる魔力量が人間界より五倍くらい多いので元々自然の生物も魔力角が発達してないケースも多いんですけど、ケンリーは私の使い魔になる前から角が小さくて、少なくとも魔界の外では生きていけないぐらいだったんですけどね、私と契約して口が聞けるようになったらこの口の悪さ、詐欺みたいなもんですよ」
仲いいんだな。
大人はいないみたいだし二人で暮らしてるんだろうか。
「そういえばさっき、あー、これは言い辛いかな、言いたくなかったらいいんだけど、ケンリーが村の奴らがなんとかとか魔女の血族をなんとかとか言ってなかった?」
物騒な感じなのだろう。
アーヤの表情もすぐに曇る。
「ああえっと、大丈夫です、えっと、この近くに人間が済んでる集落があるんですけど」
「うん」
魔界でも人間暮らせるんなら魔界と人間界?で別ける理由がわかんないけど。
まあでもエリシュの領地の時も思ったけど結界の中に確かに少なくない人数の人間が長年暮らしてるのは確かだ。
「そこの人達が私の母を……」
モゴモゴ言ってる。
これ以上は聞けないな。
「ごめんね、そこの人達に酷いことをされてるって事だね」
コクリと小さく一つ頷く。
これ以上はちょっと踏入すぎだ。
壁の方からふよふよとヒラメが帰ってきた。
「今日はひでぇ目に合う日だな」
ヒラメがそんな事をいう。
えんがわ。
「俺が調べた限りではその村、ずっとこの家の代々の魔女達と仲良くやってたみたいなんだけどよ、最近良くわかんねえやつに支配されてるみたいでよ、そいつが来てから変わっちまったんだ」
「なるほどね、地球でもよくあるやつだ、カルト集団かな?」
「チキュウ?ってなんですか?」
「私の故郷だよ、その地球を元に戻すために魔王モースを倒さなきゃいけないんだ私」
「なるほど、それがメインで旅をなさっているんですね」
「そ、ズルして空飛んでたら魔王の超長距離砲で撃ち落とされちゃってね、また空飛んだら撃ち落とされるだろうし移動手段考えなきゃな、みたいな」
今日で決戦になるはずだったのにな。
「さて、じゃあ家に落ちたお詫びとして私達がその村に行って村人を説得してきてあげましょう」
「え?」
「任せなさいって!こう見えてお姉さんコミュ力の塊なんだから!」
「いいのか?一刻も早く魔王の所に向かわなくて」
「まあまあタリアさん、私の故郷の諺にこういうのがあるんですよ『旅は道連れ拉致監禁』」
なんだそのめんどくさい物を見るような顔は。
ものぐさエルフ。




