ヴァンパイアとタツノオトシゴと(11)
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数分後。
「やっぱり、ここまで出張る事もなかったか」
「やあやあタリアさん、数時間ぶりですね」
「そんなに時間経ったか?」
地中深くまで抉れた地面を見る。
タリアさん達はここにあった城の形も知らない。
私が立っていた位置だけ棒の様に残っている。
「で?その小僧とオッサンはなんだ?」
両脇に抱えてた生存者二人を地面にポイ。
「いやオッサンは知ってるでしょ、この小僧が例のご主人様ですよ」
「てっきり辺り一帯分解したのかと思ってたぞ」
「うまーく頑張って生体反応だけ残しあたあ!?」
タリアさん達の方に歩いてたらなんか壁みたいなのに当たってずっこけて尻餅ついた。
これあれだ。
さっきジロが当たってたやつ。
結界か。
後ろで腹抱えて笑ってるヴィヴィ後でしばく。
「いったぁ、そういえばジロは?」
「ああ、姫様を任せてる」
「ああなるほど」
「う、うう」
私の後ろで吸血ボーイが目を覚ました。
「お、顔は結構美少年だな」
顔はね。
「む、き、貴様!ここはどこ……」
「元々城があった場所の前」
「な、なにを……」
私が指差す方を見て景色とかで察したのかすっくと立ち上がりマッチョの頭を蹴飛ばした。
「おごぉ!?」
「おい起きろ!」
「うごごご、起きる前に永眠しそうですわ……」
首を押さえて痛そうに立ち上がった。
確かに見えないぐらいの速度で走り回れるやつの脚力で蹴られたら首が取れそうだ。
「あら、いつの間に外に出たんです?」
「あれをやるぞ!この娘を殺す!」
目を真っ赤にしてキツく私を睨みマッチョの膝をガシガシと蹴り続ける。
酷いな。
あれってなんだろ。
「あ、あれって、たかが人間の小娘一人にそこまで」
「あれを見ろ!余の城があった場所だ!」
こんな小娘一人にどんな大技使うつもりだよ。
「まじかよ、お嬢ちゃん、予想以上のバケモンだなあんた」
私を見てマッチョも立ち上がった。
そのマッチョが腕を組んで全身に力を入れると筋肉が盛り上がり身体がモリモリ大きくなっていく。
「悪いな!もう手加減とかあまっちょろい事言ってられないみたいなんでな!」
吸血キッズが物凄い速度で逃げていく。
マッチョの背中が張り裂けて骨っぽい翼がメリメリと音を立てて生える。
尾が生え、牙が生え、力強く羽ばたく。
あばら骨が浮き出て口が細くなっていく。
「ま、まさか!これは!」
「気を付けろ!稀少だがそいつは変異種のドラゴンだ!」
結界を突き破り空中を暴れまわるそれは……。
「タツノオトシゴじゃん」
奴らはもっと可愛い羽根がピヨピヨ生えてる程度だけど。
タツノオトシゴは釣ったことないなぁ。




