ヴァンパイアとタツノオトシゴと(10)
何度も何度も私の周囲を高速で空間を切り刻んでいく。
私の服が刻まれていくが瞬時に修復。
皮膚には赤い筋が無数に付いていく。
長い長い時間に感じるほどだったが多分数秒だろう。
すぐに息切れで攻撃が止まった。
「っはぁっ……はぁっき、貴様!はじめて……はぁっだぞ……オェ……はぁっ……はぁっ……余を怒らせて五秒以上立っていたのは!」
ボロボロだったドレスも今はシャツとジーパン。
赤い傷も癒した。
「余の爪が欠けたのはこれで三度目、光栄に思え!」
そう言って爪を見せ付けて来る。
確かに刃零れしたみたいになってる。
ふうと一息ついてまた消えたかと思ったら私の背後にいて首筋に牙を突き立てた。
「まあ多分そうだとは思ったけど吸血鬼か、それなら」
歯が通らず数秒止まったので襟首掴んで全力で壁に向かって投げる。
「ぶっとべえええ!!」
壁を突き破り外に飛んでいく。
追い掛けると隣の部屋だ。
直で外じゃなくて良かったね。
真っ暗闇だがなんだろうここは。
なんか湿っぽいというか、腐敗臭?
手元に懐中電灯を構築して部屋の中を照らす。
「わーお、お姫様が逃げた理由はこれか」
ガラガラと崩れたブロックから飛び出したそれが私の手から懐中電灯を弾き落とした。
「下郎が!……余のコレクションを穢すな!」
「なーるほどねー、趣味悪いぞ」
「嫁いで来た女達をどうしようと余の勝手、余所者が口出しするな!」
彼の綺麗な金髪が血と埃で乱れている。
全身傷だからけだ。
「悪いね、私どちらかというと女の味方だから、ちょっと許せないな、この命の扱い方」
可哀想な女達。
浮かばれないな。
今解放してあげよう。
あの兵士達もね。
「死にたくなければさっさと逃げな」
座標、この城周辺一キロ圏内。
「分解開始」
 




