ヴァンパイアとタツノオトシゴと(1)
「おやおやぁ?姫様ぁ、いつの間にそんなにお胸が大きくなられたのですかなぁ?」
「セクハラだぞ○すぞカス」
「は?」
「いえいえなんでもありませんわ」
おっと、口から出てしまった育ちの悪さ。
騎兵隊を率いた柄の悪い偉そうなオッサンが馬から降りて開口一番それなのでついね。
いつもの。
私より背が高い感じだし多分百八十、いや、百九十はあるな。
デカイ。
覗き込む感じでグイグイ来る。
そのオッサンの後ろで兵隊が馬から順番に降りていく。
兵隊の首がゴトッと落ちた。
「お?おい、ちゃんと首拾っとけよ、すんませんね姫様、こいつら出来立ての死体兵でね、まだ調整が出来きってないんすわ」
指示通りに首を拾い上げてキュッキュッと元の位置にはめた。
命令に忠実に従う兵隊って所か。
ゲームとか漫画で良くあるやつ。
「で、そっちのウェアウルフは?」
「俺は人間だ!」
「威勢がいいねぇ、でも人間で狼ってことはウェアウルフで間違いないだろうが」
「え、ええっと古い友人ですわ、オホホホ」
こんな漫画みたいな作られたお上品誰が信じるんだ。
今の内に胸の周りにサラシを構築して少しキツめに巻こう。
うっぐっ。
「ふぅん、偶然再会したってのかい、まあいいですわ、ご主人様がお待ちですぜ、逃げられちゃ困るんですわ、俺らの首が跳ばされちまう、と言ってもこいつらはもう死んでますけどね、ガハハ」
なんだこの豪快軍人タイプの髭マッチョは。
人間なのかな?
私の感知能力じゃ人間かそうでないかの区別は出来ないからなぁ。
「え、えーっと、そうは申されましても私もうあの人の所にはいられませんわー」
棒読みすぎてジロに睨まれた。
いやごめんて。
わざとじゃないって。
 




