サキュバスとアンコウと(3)
店を出て近くの公園に二人で入る。
丁度ベンチが空いていた。
合図をするでもなく二人でそこに座る。
「「いただきまーす」」
弁当を突つきながら公園の中を眺める。
子供達が数人遊んでいた。
「最近じゃ子供を公園で遊ばせるなとかいう風潮ネットで見るけどまだこういう所じゃ遊んでる子もいるんだね」
「ああ~、そういえばそうだな」
サッカーボールを追いかける子、ブランコに乗る子、近くのベンチでカードゲームを広げる子、それぞれ親の姿は無いが仲良く遊んでいる。
「……で、ボウズウーマンは今日はどこに行ってきたんだ?」
ボウズウーマンじゃ尼さんだろうか。
「え?ああうん、昼前は堤防にね、いつものおっちゃん達もチラホラいたけど皆ダメだったみたいで」
「ふーん、そんな事もあるのか」
「うん、ほら蜜、あーん」
白身魚フライを差し出して来る。
「どういう風の吹き回しだ?肉より魚の女が」
「幼なじみだから優しさだよ」
「幼なじみだから、ね」
それを貰う。
お返しであたしのフライをあーんする。
何も言わずに食べられた。
「ラブラブだね」
「そうだな」
「蜜、愛してるよ」
「……愛してる、か」
「うん、愛してる」
「さて、行くか」
「どこに?」
「帰ってゲームでもするか」
立ち上がり弁当を片付ける。
「嬉しくないの?」
「……さあ」
駆け抜ける風の匂い、時間の流れる感じ、人の雰囲気、全て間違いなく本物だ。
だけどこれは。
「なあエナ」
「ん?なに?」
「現実だよな?」
ニッコリと満面の笑みが返ってくる。
「もちろんだよ」
その笑顔も本物にしか見えない。
「そうか」
「どうかした?」
「いや、なんでもない、なんでもな」
もう少し……もう少しだけ。
数ヶ月後。
卒業式。
「蜜、卒業おめでとう」
「お前もな」
紙芝居みたいにパラパラとシーンが進んでいる様な早さで時間が進んでいく。
二人して最後の学生服だ。
目に焼き付けておこう。
 




