魔界とマダイと(完)
「お、おい!早く来てくれ!」
奥に行った仲間の声に駆け出す。
もしかしたら隠れていたゴブリン達が出てきたのかもしれない。
「どうした!大丈夫か!」
すぐに開けた場所にたどり着く。
見渡す限り一面のゴブリン、ゴブリン、ゴブリン、ゴブリン……の、石像。
軽く見積もっても百はある。
サイズは大小様々だがどれもこれもゴブリンばかり。
「なん……これ」
一番近くの石像を見る。
良く見るとまるで今の今まで生きていた様な躍動感だ。
まるで獲物に飛び掛からんとするポーズにも見える。
「だれがこんな悪趣味な石像をこんな数」
「う、嘘だろ……まさか」
案内役だった村人が後ずさる。
まあこのインパクトなら無理もないか。
「あんたは下がってな、何かの罠かもしれないし」
「違う、こいつ、こいつは先月俺が撃退したゴブリンだ」
その男が指差す石像を見る。
「この頬の傷は間違いなく先月俺の畑を荒らしてた時に付けた傷だ」
確かにゴブリンの頬に稲妻の様なギザギザの傷が入っている。
意図的に付けるのは少し難しそうにも見える。
「なに言ってんだ、こいつは石像だろ」
「俺にもわかんねえよ……でも間違いない、背格好も傷も間違いなくそのゴブリンと瓜二つだ……」
「何が起こってるっていうんだ……」
それから数日間、ギルドの調査隊による洞窟の調査が行われたが洞窟からは何も生物が発見されず、大小計百三十体程のゴブリンの石像が発見される事となる。
 




