魔界とマダイと(11)
パラパラと砕けた石が周囲に散らばった。
「あいつの血が飛び散っていない、石にしたのか」
「物質の変換自体は能力の応用で出来てたんですけどこれはそれとはちょっと違う石化の能力です」
「またいつの間にそんな魔法を」
「まあこれは正確には私の体を通して出た力なだけで私の力じゃないんですけどね」
詳しい説明は後だ。
デッカイのが五月蝿い。
耳をつんざく叫び声がまだ終わらない。
こんな時は耳栓を構築。
目の前のタリアさんが口パクになった。
巨大な千枚通しを構築、ミスリル製、長さ五メートル。
強く地面を蹴って飛び上がる。
タリアさん達程の速さはないが高さは十分だ。
目測十メートル。
あれ、そう言えば高所恐怖症のつもりだったけど案外平気だな。
慣れたかな。
いや、慣れるもんじゃないでしょ。
じゃあ私の中の彼女の影響かな。
暴れまわる鯛の目の後ろ辺りを狙って強く振り下ろす。
すんなりと豆腐に針を刺す様に貫通して地面に固定した。
同時に叫び声が収まり全身をびくびくと震わせる。
ぽんぽんと耳栓を引き抜いて分解。
「悲鳴なんて鯛には似合わないよ」
それにしてもこのサイズ感の魚を捌くのも慣れたよこの世界で。
タリアさんと共にジロも寄ってきた。
「あんた、化け物だな」
「私からしたら私以外が皆化け物ですけど?」
ヴィヴィはどこに行ったのかな。
「俺は人間だって言ってるだろ、それで、こいつどうするんだ?」
「捌きますよ、内臓出して三枚下ろし」
そもそも締めた時点で死は逃れられない。
それにしても魔王の部下第四位弱かったなぁ。
「そうか、なら捌くのは俺がやってやるよ、姫さん」
「姫さん?」
「顔だけ、あんたに瓜二つな姫さんを知ってる、あんた達に会う前にちょっと知り合ってな、だから最初あんたの顔を見たときちょっとビックリした、中身は全くの別物だがな」
鋭い爪が出た。
「向こうの姫さんの方が魂がベッピンさんだったな、あんたはガサツだ」
なんで今disられたの?
その内会えたらいいな、瓜二つなお姫様。
まあ顔なんていくらでも変えられるけど私は。
なんとなく鯛が命乞いをする様にこちらを見た様な気がする。
無慈悲な狩人の前にそんなモノに意味はない。
見えない速度で移動しながらジロがみるみる内に解体していく。
鱗も取らなくていいなんて簡単だな。
というかバカデカイ鱗が付いたままバラバラにされていった。




