魔界とマダイと(9)
鯛だと思ってたモノはビチビチと暴れ回っている。
いつもの角が無いな。
そう言えば大きい種類の奴らは角がない率が高い気がする。
自然エネルギーを吸収しなくても生きていける程の生命力って事だろうか。
だが気になったのはそれだけじゃない。
足が二本生えてる。
昔の動物がいっぱい出て来る野性的な少年が主人公のアニメでそういう魚見たな。
ウンババンバンバ。
脛毛が生えてる。
キモ。
「何ですかアレ、オッサン?」
ピタッと動きを止めてその足で器用に立ち上がった。
キモ。
ペタペタと足音を立てながら私の方に向き直る。
グッパリと口を開いたと思ったら長い舌が出て来て舌なめずり。
キモ。
「いやいや、なんで鯛に足とか舌があんの」
私の事食う気かな。
ペッと私の針を吐き出した。
ベトベトに汚れている。
無理。
一瞬ニヤリと笑った気がする。
こいつが魔族ってやつだろ。
邪悪過ぎる。
ベタベタと音をわざとらしく立てながら私の方に走ってきた。
指をパチンと鳴らして何重にも何重にも巨大な檻を構築しバリケードにするがそれを気にも止めずに破壊しながら私に詰め寄ってくる。
「キモいキモいキモい怖い怖い!」
追いかけられたら逃げるのは生物の本能。
足元に巨大なワイヤーを構築して足を引っ掛けるとずっこけて数メートル滑るが巨大な網で捕獲。
「はぁっはぁっ過去一アグレッシブな漁をしてしまった」
網の中で再びビチビチと跳ね回る。
こんな不快な魚見たことない。
 




