魔界とマダイと(5)
いや、モース氏の差し金なら私の能力に対しても何か対策してるか。
まあ呪いの攻撃はそれ自体が対策ではあるけども。
「おいで蒲焼き」
蒲焼きの束縛から解放させて私の足元まで来させるとひょいっと頭を出して来たので数回撫でると自分から瓶に戻っていって消えた。
「それも奇妙な術だな」
「ああこれ?旅の途中で貰って」
両足と胴にも鎖を絡ませてほぼ完全に身動きを封じた。
地中五メートルまで埋め込む。
「これは……俺の負けだな、完敗だ」
文字通りこれなら手も足も出まい。
タリアさんもナイフを引っ込めた。
「自己紹介してもらえますか?」
諦めてその場に座り込んだ。
「……自己紹介ねえ、自分が殺そうとした相手に?」
「まあ私の事は殺せませんから」
「大した自信だな、その魔法があるからか?」
事実だし。
数秒の沈黙の後、口を開いたのはヴィヴィ。
「置いてく?進展無さそうだし」
「そうだな、襲ってきた奴だし」
肯定したのはタリアさん。
こうていエルフ。
鎖をこのままにして置いていくのがまあ一番安全か。
いや、殺しちゃうのが安全か。
「ま、待て!わかった!言う!」
「暴れない襲わないっていうなら鎖解いてあげてもいいですよ」
「…………わかった、従おう」
そうしてくれると助かる。
鎖を分解すると立ち上がってパンパンと砂を払うとボロ布をゴソゴソして腰の所から瓶を取り出してキャップを開けて飲み始めた。
「犬ってアルコール平気なの?」
「人間だって言ってるだろ立ち話もなんだしあんた達の乗り物に乗せてくれよ」




