魔界とマダイと(4)
数秒金属音が続いて再び二人の姿が見えた。
「エルフ、なかなかやるな」
男の肩の布が裂けていた。
「お前もな、何者かは知らんが」
タリアさんの太ももに鋭い爪の痕が付いていて僅かに血が流れる。
深くは無さそうだ。
「だがこの俺の爪を受けたからお前の負けだ、この爪には苦悶の呪いが掛かっている」
ダメージ自体は大したこと無さそうなのにタリアさんが膝をついた。
噂をすれば呪いか。
タリアさんが持っていたナイフの刃を爪痕に当てると紫色の煙と共に傷が消えていった。
「痛てて、久々にやったぞこれ」
「なんだそれは」
「このナイフにも呪いが込められていてな、まあ呪いを呪いで中和出来るって感じだな、まあ裏技も裏技だがな、お前は口が軽すぎた事が敗因だ」
「出鱈目を!」
確かに出鱈目だ。
マイナスかけるマイナスはプラスって事だろうか?
男が再び飛び出そうとするが足に五メートルはある太い蛇が絡みついて動きを縛る。
「な、なんだこいつは!」
「私のペットでーす、名前は蒲焼き」
瓶に血を入れるやつ久々にやった。
蒲焼きに向かって爪を振り上げるが地面から鎖を張って腕を固定。
一瞬だけピンと張った。
「くっくそ!こんな鎖どこから!」
やっぱり私の能力自体は知らないみたいだな。
喉元に噛みつこうとする蒲焼きを寸での所で止めてタリアさんもゼロ距離でナイフを突き立てる。
「まだやるか?」
私の前で動きを停めた時点で敗北は決まっていたのだ。
抵抗を辞めて力を抜いた。
降参と見ていいか。
「はいはーい、失礼しますよー」
顔を覆っているフードを分解。
出て来た顔は左目が怪我で潰れた……。
「犬?」
「狼だ!い、いや、人間だ!」
「いや、どう見たって犬だし」
「そんな事より、俺の被っていたのはどうした」
「え?分解しましたけど、必要でした?」
顔を隠したいんだろうか。
何も言わずに再構築してあげた。
「な、なんだその魔法は」
「よく知らないで私を殺そうとしてましたね」
モース氏の差し金かな。




