魔界とマダイと(3)
「じゃあまあともかく、タリアさんが空間引き裂いて一人ずつ入りましょうか」
「それはいいが、この乗り物が通れるだけの広さは厳しいぞ」
「ええー、じゃあ結界の端っこまで車で走ります?」
「いや、そこまでやっていたら王都を攻めてる連中が王都を陥落させるかもしれない、そんな余裕はないな」
蜜とラヴィさんが行ってるから余程の事がなきゃ平気だと思うけどなぁ。
「まあさっさと魔王を倒して王都に帰ろうじゃないか」
「そういえばたろ……勇者くん達はどうしたんですかね?もうこの結界の中に入ったのかな」
それとも王都に召集されて帰ったか。
太郎君の能力を考えたらまあ魔物?みたいなのに負ける事も早々なさそうだし。
地球人なめるなよ。
「もし、そこの婦人方」
「はい?」
突然の声に振り返るとボロボロの毛布みたいな布を被った男性に声を掛けられた。
モース氏?
違うか。
セリフそこ丁寧だが低い声はナイフみたいな鋭さを持っている。
「あなた、もしかして噂の異世界人では?」
私の事を指さした。
なんの噂だか知らないがね。
「胸の大きい異世界人が港町を盗賊から救ったとか、王都を襲った化け物を倒したとか、ね」
まあ間違ってない。
「私に何かご用で?」
突然私の目の前で鋭い獣の爪とタリアさんのナイフが激しくつばぜり合いをする。
「あへ?」
正面数メートル先でぼろ布の男が着地した。
同タイミングで数メートル後ろでタリアさんが着地する。
速すぎて見えなかった。
タリアさんと同等の速度!?
「貴様、なんのつもりだ」
ヴィヴィに後ろに引っ張られて男から距離を取るがあの速度だったらちょっと離れただけじゃ気休めにしかならない。
「こういうつもりだ」
そういうと男は再び視界から消えて斬撃が空を切る。
見えない速度で金属と金属が擦り合う様な高周波にも近い音とたまに見える火花。
この男、本当にタリアさんと真っ正直からやりあってる。
これでも元騎士団長だけど。




