表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
それでも私は釣りに行く!  作者: naoてぃん
2/272

ドワーフとカマスと(1)

「はぁー、漸く森抜けたーー」

女二人で丸一日歩き続けてやっとのこと平地に出た。

くぁー疲れた。

「大丈夫か?少し休憩しよう」

まだ海に辿り着くまで村が三つぐらいあるって話だったし確かにそろそろ休憩ここら辺で挟みたい。

「丁度近くに水脈を感じるから探そうか」

水脈を感じるってどんな感覚なんだろう、自然と共存するエルフだから出来る感知なんだろうか。

一度は言ってみたいもんだ。

そんな表情を察したのか向こうから返答が来た。

「あの化け物を真っ二つにしたのも私の力じゃなく精霊の力だぞ、エルフは自然界のエネルギーを借りるのに長けているんだ」

「へー、それなら私いなくても退治出来たんじゃないんですか?」

同じ事が出来た気もするけど。

「いや、そうでもないぞ」

一陣の風がフワッと駆け抜けて行く、同時にあっちだとタリアさんが風が駆けて行った方に歩き始めた。

便利過ぎる。

「普段はあそこまでの威力はないんだ風の刃も、薬の力もあったし、何より陸地に出て来ないと風の精の力は半減するしな」

私がしたことは風の精の力を短刀に乗せただけだ、とあの時振ったナイフを取り出す。

こうして見ると表面に何か文字みたいな物が彫ってあるが読めない。

言葉はわかるけど文字までは無理なのかなぁ。

「ほら見えたぞ」

確かにタリアさんの指差す方、正面一キロ程行った所に小川が走ってるのが見えた。

「あの方角だともしかしたら滝壺の川の下流かもな」

確かに遠くは山の方に繋がってるっぽい。

川の近くまで歩いてとりあえず荷物を下ろした。



「ぅっくぁー!疲れた!」

「人間だとまあかなり体力を使った方だろう」

エルフはなんて元気な生物なんだろう。

しかしいい運動になった、痩せたかな?

「そろそろ着替えたいなー」

ずっと同じ服だったしそろそろボロボロだし汚ない。

でも着替えなんて持ってないし。

「エルフの服で良ければ数着あるが……あるが……」

なんだその視線は胸を見るな、好きで大きくなった訳じゃない。

「村に着くまで我慢します」

「とりあえずここの水綺麗だし多少は洗っておいたらどうだ?」

まあ不思議な事に季節感を感じないし寒くはないだろうけど。

この世界に季節とかあるのだろうか。

「濡れたら風で乾かしてやるから」

「うーんでもなぁ」

「ちょっと濡れるだけだから」

「目がこえーよ」

スケベエルフめ。

ハァハァすんな。

ドスケベエルフを置いておいて釣具を広げる。

やっぱり川に来たら釣りしかないだろう、小川となるとやっぱりのべ竿だな。

しょんぼりすんなド変態エルフ。

仕掛けは簡単。

「竿でしょ、糸、ゴム管に玉ウキ、針、ガン玉、餌はその辺の土掘って出てきたミミズみたいな謎の生物」

ミミズみたいな生物は全部ミミズなのだ。

それの頭がどっちか判らなかったので適当な長さに千切ってブスリ。

石とかひっくり返したらこれまた謎の川虫が居たのでそれをもう一本の竿の針に付ける、仕掛けは同じだ。

タナを適当に合わせてぽーい。

竿は三メートル、もう一本も三メートル。

もう一本の川虫が付いてる方をスケベさんに渡す。

「はい色欲さん」

「名前名前」

糸を垂らすとすぐに五分と経たず当たりが来た。

ぴくぴくとタリアさんの方のウキをつつく魚影があった。

「お、おい!上げていいのか!?」

釣りしたことないの自然界の力借りてるエルフのくせに。

「まだまだ、ウキが全部沈んだらね、スィーッと引くはずだから」

しばらくつんつんされた後で微動だにしなくなった。

「あ、あれ?動きが無くなったぞ」

「ほんとに?うーんまあそういう事もあるよ」

「そういうものなのか……あれ、私のウキどこに行った?」

いや知らないよなんで見てないの。

「それ、もしかして引いてるんじゃないの?」

その言葉に反応したタリアさんが急いで竿を引いた、同時に水面をバシャバシャと叩く魚影。

まじかよ。

「お、おいおい!どうするんだこれ!」

「竿立てて!」

お、おう、とゆっくり竿を上げるが魚が案外大きくて中々上がらない。

なんだろうこのサイズ、ウナギとか雷魚とかかな。

長そう。

急いで自分の竿を脇に置いて全く準備してなかったタモを準備する。

いい忘れたがタモとは釣った魚を掬い上げる用の網だ。

「おい!おい!暴れるぞ!」

「そりゃあ暴れるでしょ」

魚からしたら生死の問題だからね。

チャチャとタモを準備してる間にかなり手前まで魚が来た。

小川侮れないなぁ。

もしかしたら魚を食べる文化があまり根付いてない世界なのかもしれない。

「よっと、もっと寄せて寄せて」

長い魚影をタモに導いてスッと掬いあげる。

本日の第一号だ。

「っしゃあ!」

初心者のタリアさんも釣りの楽しさを理解したようでなにより。

力強いガッツポーズだ。

「で、なんて魚なんだ?」

「……」

「ん?どうした?」

「これ」

おいおいなんでもありかこの世界、海外では淡水にもいるとは聞いたことあるけど日本感覚で釣り出来ないなこりゃ。


「カマスだ」


相変わらずの魔力角は付いているが見間違うはずもない。

本日の第一号はカマスだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ