地底とシャコと(6)
「エナさん、色々言わなきゃいけない事があるんだけど、とりあえず一つ、魔王に気を付けてね」
「気を付けるも何も魔王を倒しに来たんだよ」
「そうじゃないんだ、魔王軍の奥に潜む大将の事じゃない、もちろん地球を取り戻す為にはそいつも倒さなきゃいけないけどもっと身近に、何度も会ってるんだ、気を付けなきゃいけない女に、この世界でエナさんが記憶を分解してから監視していたから判る、考えて、気を付けて、いるはずだよ、もっと身近に、怪しさの塊みたいなやつが」
怪しさの塊、そんなやつ……。
「思い出して、この世界に来てすぐ会ってる、記憶を分解してからもすぐに」
記憶を分解してすぐ?狼みたいな獣?タリアさん?エルフの村の村長さん?ナマズ?
「なるほど、大体わかった……でもあの子が何を?……って飯田?」
考えてる間に飯田の気配が消えている。
ワープでもしたかの様に完全に、痕跡すらない。
シャコの気配を感じなかったのも同じ技術だろうか。
背後の扉が突然開きシャコと絡み合ってる状態のタリアさんが転がり込んできた。
「タリアさん!ツガイにシャコはおすすめ出来ませんよ」
「冗談言ってないで助けろ!」
騎士団長が情けないなぁ。
タリアの上に乗っかりパンチを構えていたシャコを大きく蹴り上げると宙で三回転して天井にぶつかった後地面に叩き付けられた。
数回びくびくして動かなくなる。
頭が完全に潰れてらぁ。
「ふう、危ない、助かった、ちゅーしてやろう」
「タリアさんがしたいだけですよね、蜜が来てからスキンシップ激しいですね、皆はどうしたんです?」
差し伸べた手を取り立ち上がった。
「ああ、あの後皆でどうしようか相談してたら突然前の部屋の扉が開いてな、そしたら大量のコイツらが襲って来て散り散りになった」
「ぽんこつぅ、しっかりして下さいよ団長」
何やってんだよ団長。
「いや、こっちはいいんだよ、男はどうした?いたんだろ?男児」
「まあいたんですけど、消えました」
「なんだそりゃ、まあ居ないなら早くメンバー集め直してさっさと帰る……じゃない、剣先団を壊滅させに来たんだった」
忘れてた、というよりは私は飯田を連れて帰りたかったんだけどいないもんは仕方ない。
ホログラムとかだったのかなぁ。
でも気配は間違いなくあったし、多分ジャマー的なあれなんだろうな。
もしくは幽霊。
「大型生物の気配、更に地下にありますよ、あのナマズばりの気配」
「む、あの感じか」
「あの感じです」
飯田の秘蔵の合成生物とかなのかな。
とにかく悪さする前にぶっ潰しとくかぁ。




