地底とシャコと(5)
シャーッ!とこっちを威嚇したかと思うと私達の間を抜けて猛スピードで二匹とも駆け抜けて逃げていく。
「あ、あれ?逃げちゃった」
「まあエナに見つかるとボイルされて剥かれて食われるって思ったんだろうな」
蜜が構えを解いてそんな事を言う。
「いやいや、流石にこの人数であのサイズは食いきらないでしょ」
「食い切るサイズなら食うのか」
「美味しいよシャコ」
みりんと醤油と塩と砂糖。
そして鍋にドボン。
まあ海老みたいなもんよ。
海に住んでる虫って意味じゃ同じ。
「お前まさか私の知らない所でフナ虫とか食ってないだろうな」
「蜜は私をなんだと思ってるのかな?ん?」
扉に近付くとひとりでに開いた。
地球のゲームに出てくる様な研究室みたいな部屋だ。
鍵拾うとゾンビが出てくる感じの。
奥に更に扉。
そこを目指して私が一歩踏み出すと後ろでプシューと音を立てて扉が閉まった。
「は?ちょっと……いや、これは飯田なりのメッセージかな?」
一人で来いって事かな。
扉をドンドン叩く音が聞こえる。
私がその気なら分解なんて訳ないけど。
「タリアさん!ちょっと飯田と話してくるんで!そっちはお願いしますね!蜜と仲良く!」
聞こえたのかどうかはわからないがドンドンと叩く音は消えた。
「さて、と」
奥の扉の前に立つとこれまた自動でプシューと開く。
書斎の様な狭く薄暗い部屋の真ん中で白衣の男が一人椅子に座っている。
間違いない、飯田だ。
「やっほ」
「エナさん、ごめんね、茶番に付き合わせてちゃって」
「ううん、いいよ、なんか私に話があるんだよね?」
椅子から立ち上がり私から一メートルの位置に立った。
私の方が五センチぐらい大きい。
「色々話したい事はあるんだけど、とりあえず元気そうで良かったよ」
そう言って何かのリモコンを操作すると垂れ幕がライトアップされてどこかで見たような魚達の写真が写し出された。
「巨大カマス、巨大タコ、巨大ウツボ、なるほどね、この辺は飯田の差し金だったんだ」
まあそういえばタコの……名前忘れたけどあいつは剣先団の中でも地位が高い方だったはずだ。
ああそうそう、モンゴウだったかな?
モンゴウイカならぬモンゴウタコだ。
「なんでこんな団を作って王都を襲ったりしたの?」
「まあいろいろ理由はあるけどね、一番はエナさんに記憶を取り戻して欲しくて」
他にもやり方あるでしょ。
巨大魚介類を差し向けたら記憶戻りそうになるなんて私だけだよ。
結局記憶戻ったきっかけは違うだろうけど。
 




