地底とシャコと(4)
「感知は出来ないのか?」
「うーん、生命体の反応はいくつか感じますけど、シャコの反応がないなぁ、なんでだろ、とりあえず飯田の反応を追いましょう、こっちです」
洞窟の奥の方から微かな光が射しているが後ろからのエレベーターの光が消えたら真っ暗だろう。
ラヴィさんが指をパッチンとすると人差し指サイズの光が現れた。
それが全員の頭の前に設置される。
LEDぐらいの明るさだろうか。
かなり明るい。
「エナ様の能力に頼ってばかりなのも申し訳ありませんから」
「あ、そうですか?じゃあありがたく」
懐中電灯ぐらいなら作れるけど洞窟全体に光を作ろうと思ったらバッテリーとかも作らないとアレだし。
作れるけど。
静かな洞窟を五人で歩く。
特に妨害の類いはない。
ピチョンピチョンと水滴の音は聞こえる。
「飯田の近くにエレベーター着地するように作ったつもりだったけど案外あるなぁ」
もしかしたらもう少し地下だったかな。
なんとなくこの歩いてる道も傾斜になってるし。
「近くに水脈があるな」
「判るんですか?」
「エルフをなめるなよ、いや、舐めていいぞ」
無駄に腋をチラチラしてくる。
卑猥エルフ。
「タリア様、エルフの品位を落とす行為はおやめ下さい」
品位?
そんなものこの冒険が始まった時から無かったよ。
出会ってすぐはあったかもしれないけど。
このパーティーはもう少し緊張感があった方がいい。
「まあ冗談はさておき、水の気配なら私よりヴィヴィのが察しやすいんじゃないか?」
「は?セイレーンにそんな能力ないわよ」
ダメだこりゃ。
「おい、こいつらはいつもこうなのか?良くストレス無く旅出来たな」
「いやいや、ガチガチの緊張感MAXパーティーのがいやでしょ」
「それもそうか、ユルい方がお前らしいな」
「今度蜜にも私達のユルい冒険譚を聞かせてあげよう、それはそうとそろそろ着きますよ、飯田の所に」
角を曲がると洞窟に似つかわしくない近未来的な扉、その前に巨大なシャコ。
二匹。
「こいつか、シャコ」
そのタリアさんの声に反応してぐるりとこちらを向く。
「ゲームのエンカウントみたいだね蜜」
「ボスの扉の前の敵はそれなりに強敵だぞ」
気配は確かに感じていたがこんな近くだとは思わなかった。
なんかおかしいな。
私の感知の能力を阻害する何かがあるな。




