地底とシャコと(3)
円筒状の乗り物は私達を乗せてゴウンゴウンとモーターの音だけさせて降下していく。
かなりの速度だ。
「今どの辺だ?」
「えーっと、二百メートルぐらい」
正確には二百二メートル。
ここまで四十秒。
加速も落下の浮遊感も殆ど感じない、凄いエレベーターだ。
もう後何秒もなく目的地に着くだろう。
「えーまもなくー、地下一階、地下一階、三百十二メートルです」
「一応やってくれるんだな」
「まあエレガはエレガだから」
ただのコスプレだけど。
エレベーターが減速を始めようとする直前にガンッと急にエレベーター全体が揺れて緊急停止。
急ブレーキの音と金属の焼ける臭い。
「んぎゃあ!死ぬ死ぬ!何々!?」
一瞬で半泣きになったヴィヴィに首を捕まれる。
「んげえ!苦しい苦しい!下で何かが地下一階のドアを攻撃してるみたい、苦しいってば」
ヴィヴィを引き剥がして扉に手を当てて感知に集中する。
「これは……エビ?」
長い胴、たくさんの足、飛び出た目、エビに似てるがこれはもしかしたら。
「シャコだ」
手のひらサイズのシャコはアクリルの板をも貫通するパンチを放つ。
ダイバーの爪を粉砕するなんてのも良くある話だ。
そのシャコが多分二メートル級になってる。
化け物だな。
「お、おい、どうするんだ」
「直しながら降ります、掴まってください」
剥がしたヴィヴィをタリアさんに投げつけて壊れた箇所を随時直しながら再びエレベーターを動かす。
分解と再構築をコンマ一秒で繰り返しながら降り続ける。
安全装置がよく出来てるエレベーターだ。
残りが七十メートルぐらい。
この魔法自体は好きじゃないけど生物に対して使わないなら問題ない。
再び下の方でゴンッゴンッガンッガンッと地下の出口を叩き割る音が聞こえる。
「すぐ着きますよ、全員対ショック防御!」
「そんな事言っても何すればいいんだ!」
「踏ん張ってください!」
対ショック防御なんてそんなもん。
軽いピーンポーンという音と共にゴールが近づく。
考える間もなくドンッという強めの衝撃と共に地下三百十二メートルに着地した。
修理しながらだったから仕方ない。
全員が体制を崩しながらもなんとか着地するとゆっくりとエレベーターの扉も開く。
「いってて、着きました、そして居ますよ、巨大シャコ……あれ?」
ベコベコに凹んだ扉を瞬時に分解、再構築して身構えると開いた先は洞窟みたいな場所だった。
「なんだ、いないじゃないか」
「ええ、そんな筈は……」
剣を構えてた蜜が私より速く扉を出ると周囲を見渡すがシャコがいない。
感知でもシャコがいない。
「消えた」
「そんな訳があるか」
「いや、でもほんとに今の今まで居たのに」
よっぽど地上で足が速いシャコなんだろうか。
それはそれでキモい。




