昔とフナと(完)
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「と、ここからエナは一人で魔王に立ち向かい、痛み分けでこの世界に取り逃がした所を追ってきたんだが、その時Mは地球を特大の呪いでエナの力を暴走させて地球を崩壊させて再構築出来ない様にしたからこの世界まで奴を追ってきたって訳、倒して地球を再構築する為にな」
モニターを暗転させた。
黙って見ていたエルフがふぅと息ついて一言。
「あいつ、若い頃可愛過ぎないか」
「言うことがそれか」
理解は出来る。
今見ても昔のエナ最強に美少女だった。
犯罪だ。
いや、犯罪級だ。
間違っても口には出せないけど。
「わかった事があるわ」
セイレーンがすっくと立ち上がるとあたしとエルフの間に立つ。
「あんた達そっくりだわ」
「「どこが」」
「そういう所よ、喋り方も、性格も、好みも、多分相当似てる、だからエナはタリアとストレスなく冒険出来たのかもね」
髪も背も声だって似てない。
こんな背の高いスレンダーと一緒にするな。
あたしのが美人だ。
向こうも同じ事思ってるかしれない。
癪だ。
「ぅおっほん!まあとにかく、あたし達はこうして地球人の生き残りを数名この船に乗せて魔術的はなんやかんやで長い年月を掛けてこの世界に来たという訳だ、あいつは万物を自由に分解したり再構築したりする能力でマザーと呼ばれていた、産むも殺すもあいつ次第って事だ、因みにあいつが記憶を失っていたのは……おっと帰って来たな」
「えへ?呼んだ?」
プシューと扉が開く音と共にバケツを持ったエナが立っている。
「おかえり」
「うん、ただいま、で、なに?」
相変わらずとぼけた奴だ。
エルフが口を開いた。
「いや、今お前の昔の話を聞いててな、お前が記憶を失った理由を聞く所だった、お前ほどの力を持つ者がなんで記憶を?誰かにやられたのか?」
「え、えーと、どこまで聞いたか知りませんけど私自分の魔法好きじゃないんですよね、だから記憶を封印してれば使わないで済むかと思ってたんですけどね」
だがそれは矛盾している。
能力が無ければただの女だ。
釣りに行ってくると言って突然出て行ったのはエナの意思だ。
その途中で、急に山の中で自分の記憶を封印してどうしたかと思ったが、ずっと葛藤してたんだろうな。
自分の事、忘れたいぐらいに。
記憶の分解なんてのも出来るとは思わなかったが。
それも様々な出会いで再構築してしまった。
辛いなら、そのままでいてくれてもこっちとしてはよかったけどな。
「さて、昔話はここまでだ、着くぞ、お前達が王様に言われて倒しに来た剣先団の本拠地、そしてあたし達も関係あるやつの元に、もう気付いてるだろう?エナ」
「うん、気配を察知した、でも魔法持ってたんだね、飯田」
そうだ、剣先団のリーダー、それは巨大化と生物の混合能力を持った飯田だ。
「どうやら最後の方になんのつもりか魔法をもらってたらしい」
「ま、飯田ならなんとかなるっしょ」
記憶が戻ろうが戻るまいが相変わらずの能天気だな。
船のモニターがパッと山を映し出した。
と言っても全体山だが。
「さあ、いくぞ」
決戦前にまずは戦力の補充をしないとな。




