昔とフナと(10)
「日本も世界も大分魔法に慣れたねぇ」
「そうだなぁ」
二人の休みが偶々重なった日曜日、テレビを見て雑誌を読みながらそんな他愛も無い会話をする。
この時間を守る為に仕事をしていると言ってもいいだろう。
下着だけのエナは布団にくるまりながらゴロゴロしている。
あたしはダボダボのシャツにダボダボジーパンだ。
ちなみにこれは彼シャツならぬ彼女シャツだ。
スーハースーハー。
『新宿の線路を爆破するという……魔法を使った犯罪が……若い男性による……』
魔法に慣れすぎて魔法を使った犯罪が多すぎる。
全てあのオッサンが悪い。
ミスターM、本当の名をモースというらしい。
あれから何度か会ったがイマイチ何がしたいのかわからないが未だに希望者には魔法を配っているらしい。
「怖いよねぇ、出歩きたくないな」
「バカ?」
「だって危ないし、危険だし、danger」
「アホ?」
「ドイヒー」
「誰も本気のお前には敵わないだろ」
「この年で犯罪者になりたくない」
犯罪者に年齢は関係ない。
というか証拠も残さずに消滅させられる能力があるんだからバレなきゃ完全犯罪なんて余裕だろう。
「そういえば今日飯田来るんじゃ無かったっけ」
「じゃあ服を着ろよ」
「なんで?いいじゃん」
「あいつだって男だぞ、男は狼だぞ」
「飯田はウーパールーパーが関の山でしょ」
わかる。
無害すぎる。
狼な顔が想像できない。
雑草の様な男だ。
いや、雑草は近くの草木の栄養を吸ってしまうから害はあるか。
エナが読みかけの釣り雑誌を閉じる。
なんか察知したのだろうか。
「飯田が来たか?」
感知の精度も年々上がってる。
「……違う、男性だけど、もっとおじさん、でも敵意は感じない、でも知らない人」
そういうとイソイソと布団から出てノソノソと服を着始める。
あたしと同じ様なジーパンとシャツの格好になったのとほぼ同時のタイミングでインターホンが鳴った。
因みに二階建てアパートの二階角部屋だ。
「お前また同じ様なシャツとジーンズ買ったのか?」
「私がファッションなんてめんどくさい事気にすると思う?」
「ないな」
女を捨ててる様な取られ方をすることもあるがなにぶん顔とスタイルが良すぎてこれが似合ってしまうから仕方ない。
シャツもジーパンも男物だが背も高いし女物よりいいらしい。
なんでこいつと居てあたしは身長が高校の時から伸びてないんだ。
吸われてるのか身長。
そうして今日もあたしは恨みをぶつける様に乳を揉む。
癒し。




