昔とフナと(3)
そのまた数日後。
多少の事で怯まないあたしを見て痺れを切らしたのかクラスの女子が数名、あたしの所に来た。
多少の事と言ってもほぼエナがリカバリーしてくれてるのでなんとかなってる所もある。
「ねえちょっといい?」
「え、な、なに?」
あからさまにリーダーみたいなツインテールの子があたしの前に、真正面に立ちその両サイドをメガネの子とぽっちゃりの子が挟み込んだ。
「ちょっと来てよ」
言われるがままについて行っていいものだろうか。
更に後ろで数人がクスクス笑ってる。
ああやだ。
やっぱり標的になってるんだ。
直接来なければまだ見て見ぬ振りも出来たかもしれないのに。
「何か用?」
「いいから来いって、生意気なんだよお前」
言うや否やあたしの腕を掴んで無理矢理引っ張り教室の外まで連れてかれた。
「痛い!痛いってば!」
「いいから来いよ!」
腕を引っ張られ、後ろからニヤニヤしているぽっちゃりとメガネに押されて屋上入口に来た。
確か屋上は入ってはいけないらしいから鍵が掛かってるらしい。
「まあ、ここでいいでしょ」
階段の突き当たりで突然突き放された。
「あんたさぁ」
髪を無理矢理掴まれグイっと顔が近づく。
毛が抜けるやめて欲しい。
「ちょっとばかり男子に人気だからって、都会の方が来たからって調子に乗んなよ」
「男子なんて知らない!」
そもそも越してきてから挨拶以上の会話をした男子なんて殆どいない。
「口答えすんなよ!」
髪が放されたかと思ったら突き飛ばされて壁にぶつかった。
「いっつぅ」
腕を変な角度でぶつけたみたいだ。
折れてるまではいかないけど捻った。
「邪魔なんだよ、大体……」
腕を押さえてその罵声を続けるツインテールを見上げると蹴りでも飛んでくるかと思ったらあたしの隣にそのツインテールが吹っ飛んできた。
「えっなにっ」
ツインテールの方も何が起こってるのかわかってないみたいで鳩が豆鉄砲喰らった様な顔をしている。
仲間割れかと思って吹っ飛んできた方を見るとメガネとぽっちゃりの間にもう一人、黒い髪の少女が立っていた。
「いったぁ!何すん……あ、あんた!隣のクラスの不良の、エ、エナとかいう」
その名前を聞いて両サイドの二人も声を上げながら逃げていく。
「ま、待ちなさいよあんた達!やだ!助けて!」
へっぴり腰の四つん這いで階段を転がる様に逃げていった。
「あんた、ただの地味子かと思ったらやっぱりただの地味子だったね」
「エ、エナ、ちゃん?な、なに?不良なの?」
「……はぁ、めんどいからちょっと来て」
言われるがままに着いていこうと思っていたらそのまま彼女は屋上への扉のノブを回した。
鍵は?




