飛行船とサンショウウオと(7)
「もしかして私達にも魔法使える様になってるのかな!」
だとしたら時間戻れ!
一時間!
リアルタイムでテレビ見れる!
「下手に色々にしない方がいいぞ、過ぎた力は身を滅ぼす」
「例えば?」
「世界を滅ぼす事になるかもな」
「まっさかー」
まあでも時間弄ったりしたら何が起こるかわからないか。
「とにかく始まるぞ」
テレビに視線を戻すとMさんが手のひらから火を出したり氷の塊を出したりしている。
なんか思ったより普通?
手品っぽい。
「これ本当に魔法?」
「なんとも言えんな」
もっとハリー・ロッカーみたいな魔法を想像していた。
杖から光出したりビーム出したり鍵の開け閉めとか?
ハリー・ロッカーってのは一時すごく流行った魔法使い物の映画だ。
私達と同世代の連中は結構な割合で棒を振り回して魔法の呪文を唱えたものだ。
一通り出し終わったMさんはアナウンサーの隣に座り直してカメラ目線になる。
『今回はこれで、少女達、また会おう』
「えっ今のって」
「あたし達に言ってるんだろうな」
画面に映るMステさんが指をパチンと鳴らすと何か渦に吸い込まれる様に消えていった。
「え、ええ、なにそれ」
今のは手品っぽくなかったな。
突然消えた事でアナウンサー達も騒然としている。
「また会うのかな」
「まあ、その内会うんじゃないのか?」
なんて言ってた数日後。
蜜とファミレスにいたら突然知らない男性に声を掛けられた。
チャラい感じのロン毛でちょっと不潔な感じだ。
タイプじゃない。
「お姉ちゃん達、ちょっといい?」
「はい?」
「ちょっと付き合って貰ってもいいかな?」
そういう男は右手の手のひらの上に火の玉を作った。
これは魔法だ。
あの放送の後、あろうことかM氏はあの後魔法を国民に配り始めた。
しかもほぼ無差別、もしかしたら素養とかもあるのかもしれないけど誰彼構わず欲しいと言えば魔法を使える様にして回った。
ここ数日で爆発的に増えたし、人により使える魔法は違うがそれを悪用して犯罪をする人間がガンガン増えていった。
この男もその一人だろう。
「あースミマセン、好みじゃないんで」
「あ?」
「おいマヌケ、こんな所でそんなもん振り回すな」
「はぁ?おい、自分達の立場わかってんの?」
イライラした表情で左手にも火の玉を出す。
こんなところでそんなのしたらスプリンクラー作動するって。
数日で治安悪くなったなぁ。
過ぎた力は身を滅ぼすってこう言うことか。




