ドワーフとカマスと(15)
「いえいえいいのよ」
「この村を守ってくれたんだもの」
「お安いご用よ」
「気にしないで」
と口々に女性達から返事が来るなかで隣に立つエルフが何か言いたさげだったので目を合わせた。
「すけこまし」
「は?」
「ちょっとは自分の顔の良さを認識した方がいい」
褒められてるんだろうか。
すけこましってどういう意味だっけな。
「私は風呂長いからゆっくりしてろ、お前も長かったけどな」
長風呂なのは昔から良く言われてた。
トイレとかお風呂とかの一人の空間で考え込むと止まらなくなる悪い癖だ。
「長いと思ったら入ってくれば良かったじゃないですか」
「馬鹿を言うな私は誇り高きエルフだぞ」
一分前の言葉をその誇り高きエルフに聞かせてやりたいね。
もしかして脱衣場の外でずっと待ってたりしたのかな。
優しいのかヘタレなのか。
髪を乾かしスランさんの家でスランさんと話ながらタリアさんが帰って来るのを待つこと多分二時間ぐらい。
ホントに長い。
「いやーいい風呂だった、いつも水浴びしかしないからな」
まあマンガとかのエルフは確かに水浴びのイメージはあるけど村があるんだから風呂場ぐらいあるでしょうに。
「おう、遅かったな、女って長風呂なもんなのか?」
「なんとも言えない……」
女がというか個人差だとは思う。
「じゃあ鍛治場にいくか」
あ、自分から言って忘れてた、包丁作ってもらうんだっけ。
いい魚を綺麗に捌くにはどうしても良く切れる包丁の方がいい。
これからまたあんなデカい魚ばかり出てきたらタリアさんのナイフが過労死する。
というか単純に私も刃物が欲しい。
危ない意味じゃなくて。
「まあもう仕上げの状態なんだけどよ、風呂長えからもうやっておいたぞ」
仕事が早い。
そしてあの釣りの後にタフだなこの人。
鍛治場に案内されると包丁が三本、一般的に家庭で見るサイズの物が用意されていた。
柳包丁、出刃包丁、そして牛刀。
「……私ここまで細かく指示しましたっけ?」
あまりにも私の世界の包丁と酷似しすぎる。
周りの飾ってある包丁を見る限り名前もわからないような刃物が色々ある、この世界特有の刃物だろう。
「むかーしな、あの水車を作った異世界人が残しててった資料を元に使えそうなやつを選んだんだ」
何者なんだ昔の異世界人。
間違いなく地球人だなこれ。




