飛行船とサンショウウオと(1)
『まあまあ、お茶でもどうぞ』
「あ、ああ、ありがとう」
ふわふわと浮かぶ半透明の幼女がどこから出したかちゃぶ台を出しお茶を淹れ、タリアさん、ヴィヴィ、ラヴィさんの前にふわふわと並べた。
この幼女はホログラフィックだ。
『あ、お茶菓子もどうぞ、地球の物なのでこの世界の方のお口に合うかわかりませんけど』
それぞれの前にどら焼がドンドンドンと出された。
「ご、ご丁寧にどうも」
珍しくヴィヴィがかしこまってる。
図々しさの塊だと思ってたのに。
『いえいえ、ママがお世話になってますからぁ』
ふわふわの幼女が私の周りをくるくると回りながら飛び回る。
「モイラ、大人しくしなさい」
『はーい』
機械音声ではあるが普通の人間の様に音の強弱に違和感はない。
私の隣にちょこんと座った。
ここは船の中。
船の名前は[ベース]
この子はベースの管制プログラム[モイラ]
「そしてモイラとベースを作ったのが私、正確には私の能力です」
「なるほど、だからママか、それはそうとして私達が拉致されてるのはどういう事だ?」
「まあモイラが皆にお礼したかったんでしょうね、いい子なんですよ」
ホログラフィックだから触れはしないけどモイラが正座する私の膝に膝枕の形でニコニコしながらスッと乗ってきた。
因みに畳。
「まだ子供ですけどね」
『子供でーす』
「子供ですはいいけどどうしたの?その内行くからって伝えておいたよね?」
『あのね、みっちゃんが先に帰って来てね、そしたらみっちゃんがママ探しに行こうって』
またサイコレズが余計な事しようとしてるのかな。
「蜜はどこ?」
『今は管制室、私の本体といるよ』
「あーなるほどね、そっち行こうかな」
「あー、お取り込み中悪いんだが、エナ?色々と聞きたいんだが……」
タリアさんが茶飲みに手を付けながら聞いてきた。
どら焼も食べていいんですよ。
「お前、記憶全部戻ってるな」
「yes」
「お前の能力、言えないのか?」
「あー、い、yes」
言うに言えない。
「どうしてだ?」
「あーほら、えーと大人の事情?」
流石にちょっと言いにくい。
言っちゃダメだ。
「それは魔法か?お前達の世界の技術か?」
「うーん、まあyesと言えばyesですけどnoと言えばno」
どこまで言っていいかの判断に迷う。




