ドワーフとカマスと(14)
半端に休んだから逆に疲れが出てしまったのかもしれない。
体がどっと重い。
歩くのも疲れたしあんな化け物釣り上げるのにどれだけ体力を使ったか。
それにしてもドワーフの人達がいい人達ばかりで良かった。
エルフにしたってそうだけど悪い奴等だったらただの人間の私なんてすぐに殺されていたかもしれない。
まあある意味一番最初に出会ったのはあの狼だけど。
こわいこわい。
自分からは見えないけど、もう痛みの無い背中の傷は本当に全部癒えているのだろうか。
呪いとか染み付いたりしてないだろうか。
獣の爪とか菌とか大丈夫なのだろうか。
そこはエルフを信じるしかない。
「一人だと色々考えちゃってダメだなぁ」
まだ山を出て一つ目の村だし先は長い。
元の世界に帰れるんだろうか。
不安は尽きない。
そもそも私はなんの為にこの世界に現れたのだろう。
意味なんてあるのかな。
「やめよう」
ナイーブになってる訳じゃないけどこれ以上一人で考えても無駄だね。
お湯を止めて脱衣場に用意されていたタオルで体を拭いて新しい服に袖を通す。
ボロボロだったところが綺麗に直されている。
ドワーフ恐るべし。
服の上に書き置きがあったけどドワーフ語なのかこの世界の文字なのかはわからないけど読めなかった。
「言葉はわかるけどやっぱり文字は無理か」
タリアさんのナイフに刻まれた文字もそうだった。
まあ服直しておきました的な事でしょ。
下着まで完璧に直っててドワーフ族の女性達の指先の器用さに驚かされる。
全部着終わって脱衣場から出ようとしたらさっきまでの私と同じくボロボロのエルフが脱衣場にドワーフの女性達と入ってきた。
「む、かち合わせようと思っていたが案外早風呂だな」
「変態のオーラを感じて」
「そんなオーラ出てたか」
「信じるか信じないかはあなた次第」
ドワーフの女性達と同じ目線まで屈む。
「服、ありがとうございました、ちょっとの時間しか預けてないのにばっちり元通りです」
元通りどころか布自体は多分良くなってる。
まあ量販店の安物だし。




