ドワーフとカマスと(13)
「スランさん、とりあえずお願いがあるんですけど」
「おう、なんだ?」
「シャワー、貸してください」
なんと言ってもお風呂。
川の水じゃなくてお湯が浴びたい。
服も汚ない。
というか服もさっき釣りの時に破いちゃったし新調したい。
お洒落とかには特別興味ないけど最早そういう次元の話ではない。
異世界そういう所は不便だなぁ。
「おう、ちょっと待ってな、今女衆に声かけて来るぜ、なんと言っても村を救ってくれたヒーロー様だしな」
「助かります」
とは言ってもドワーフは女性も小人サイズだし私が着れる服があるだろうか。
というか私は釣りたいように釣っただけなんだけども。
「じゃあ俺の家で待ってな」
「はーい」
それにしても疲れた。
よくよく考えたら水車小屋の修理中は少し休憩を挟んだがほぼ歩きっぱなしだった気がする。
「人間とはもっとか弱い生物だと思っていたよ」
隣を歩きながらタリアさんが投げ掛けてくる。
「案外タフじゃないか」
「あはは、良く言われます」
まあスタミナ的な消耗だけで怪我とかはしてないからってところもあるがそれにしてもクタクタだ。
「まあ突然異世界で目を覚ましてこんな訳わからない土地にほっぽり出されて、タリアさんと最初に出会わなければ狼に殺されてた事を考えるとやっぱり人間は弱いですよ」
「お前、あの狼がそういう襲い方してたと思っていたのか?」
エルフ特性の塗り薬でもう背中の傷はすっかり塞がっている。
「え、どういう意味です?」
「あの狼はワーウルフ、人狼だ、お前に欲情してたんだぞ」
……知らなかったアンド知りたくなかったぁ。
スランさんの家で座っていると暇すぎてウトウトしてきた所でスランさんが女の人達を引き連れて帰って来た。
「風呂の準備が出来たぞー」
扉の開く音とその声でハッと意識が現実に戻った。
あぶないあぶない。
「ヨダレ垂れてるぞ」
タリアさんに指摘されて口元を拭う。
「嘘だ」
「うら若き乙女に向かってなんて事を」
「いいから風呂いってこい」
「タリアさんは?」
「一緒に行ったら揉むぞ」
「いってきまーす」
ドスケベエルフこれでもセーブしてくれてるんだ。
女の人達に案内されて一般的な脱衣場らしい脱衣場に通された。
鍛冶に長けてるという事はドワーフ族は火の扱いにも長けているんだろう。
浴槽ではなくシャワーだが完全個室でしっかりお湯が出ている。
女の人達にボロボロの服を渡して新しい服をお願いすると寸法の名目で乳揉まれた。
結局これよ。
新しく服を作ってくれるらしい。
まあ服代だと思えば安いか……。
とりあえず衣服に関しては任せよう。
専門外だ。
今はとにかくシャワーが浴びたい。




