ダークエルフとカニと(11)
「飛びすぎませんように!」
自分のコントロールを信じてヴィヴィに言う方角に真っ直ぐ投げた、つもりでした。
そんな事もありました。
力が足りなかったみたいで浮力が切れた蟹は手前の家に向かってメテオストライク。
「あ、やべ」
飛びすぎませんようにとは言ったけど飛ばなすぎはあかん。
ヴィヴィが私を持ち上げるから動揺した結果だ。
ヴィヴィが悪い。
あいつが魔女だ。
民家に直撃しそうな蟹を皆で見守っていると私の横を高速ですり抜ける黒い影が蟹の着地と同時ぐらいに蹴り上げて再び蟹が浮いた。
「ラヴィさん!」
一瞬こっちを見てニッコリ笑った気がする。
そのまま蟹を追っていった。
数秒の後にズンッという重い音が届いてきた。
「お、追いましょう!」
「お待たせ致しました、少し夜風に当たってました」
「まだ昼ですよ」
「それもそうですね」
綺麗にひっくり返っている蟹に手を突いて立っていた。
もう大丈夫そうだ。
思うところもあったんだろう。
「もう落ち着いたのか?」
「はい、お陰様で一族への報告も無事終わりました」
「ん、そうか」
タリアさんもやれやれと肩を落とす。
一族への報告ね。
「それで、この蟹どうなさるのですか?」
「え、ああ、まずフンドシ剥ぎ取って足をもいで食べやすい大きさにします、フンドシってのは蟹のお腹の部分の丸い所です、卵とか入ってる所」
このサイズの蟹が卵持ってたらやばそうだな。
「なんで先に洗いましょう」
住民の協力で海水を組み上げて汚れている所をザバーッと洗い流す。
「次にフンドシ」
私が上に乗ってフンドシの中に手を入れてベリベリベリベリと剥がす。
適当な広さまで開けて後はキックで無理矢理剥がした。
「ふぅ、次にー」
もう大体冷えた中身を覗き込む。
黄色い物体が見えた。
ミソが凄い。
「あーこれこれ、超いい匂い」
ヨダレ出るぅ。
これを白米に乗っけてかっこみたい。




