ダークエルフとカニと(2)
「え、エナは船酔いとかしないのか?」
「あー昔一度ありますけどそれからは無いですね、というか船釣りもそんなに回数無いし」
車酔いと違って逃げられないし船に帰って貰う訳にもいかないし常に揺れてるし最悪だったのは覚えてる。
「私だって船には慣れてるつもりだったんだけどな」
「真っ昼間から呑んでるからですよ、と言ってもそろそろ夕方ですけど、呑み始めたのは昼前だし」
私の後ろをフラフラ歩くゾンビ二人の背後、遠くに島が見える。
アレが王都だろう。
王都って浮島なのかな。
更にずいーっと右に視線を移動するとまた違う大陸が見える。
そっちは最初私達が居た、私が現れた陸地だ。
皆元気にしてるかな、エルフの人達とかドワーフの人達とかリリー達も。
まあつまり今立ってる場所は全く初めて来る土地だ。
魚の分布図とか欲しい。
とは言ってもこの世界だと地球の淡水魚が海に居たり海水魚が川に居たりでなんも信用出来ないけど。
地球の常識は通じない。
もしかしたら鮭もこの世界では赤身魚かもしれない。
なんて。
「何ニヤニヤしてんのよ」
トボトボ歩くゾンビ二号が私の腹を羽根で突っついて来る。
「鮭は白身魚だよ、ピンクの身は食べてる物の色」
「何の話よ」
「なんでもない」
いや、そういえばどっかで鮭捌いたような。
リリーの所でだったかな?
確か白身魚だったわ。
でもこの世界なら赤身魚の鮭もいるかも。
んなアホな。
「ま、そんな事はどうでもいいので行きましょうか」
百八十度回転して港町へ向かう。
「お前、本当は今すぐ釣りしたくて堪らないって感じだろ」
ゾンビ一号。
「してきていいですか?」
実際そわそわしてる。
「ダメだ」
「いけず」
つらみ。
やばたにえんのむりちゃづけ。




