ダークエルフとカニと(1)
「はいとーちゃく」
船からぴょんと飛び降りてトットットッと船着き場を歩く。
私達の他にも何人か乗客がいる。
この船はこの港と王都を一日で二回往復してるらしい。
まあ時間掛かったのは間違いない。
多分片道五、六時間ぐらい。
途中でタリアさんとヴィヴィが酒盛り始めたけど直ぐ船酔いしてて地獄だった。
バカなのかな?
トボトボとローテンションな二人を伴ってラヴィさんが降りてきた。
「懐かしいですね、ここ」
「ラヴィさん、ここ来たことあるんですか?」
「ええ、と言っても何十年も前ですけどね」
タリアに助けられてからタリアさんとずっと一緒に居たってのは聞いた。
だからその前か。
「大分景色も変わりましたね」
そら何十年も同じ物なんてのは中々ない。
わからないけど。
もしかしたらそんなにコロコロ色々変わるのは人間の世界だけかもしれない。
いや、この世界にも人間いるよ。
「うえっ気持ち悪い、水くれ」
真っ青な顔のタリアさんがラヴィさんの肩に手を置く。
「あまり御自身がお酒強くないの知っているではないですか」
そう言って金属製の水筒を取り出して渡した。
流石準備がいい。
グビグビとそれを飲んで深く溜め息をつくタリアさんから半分ぐらいになったであろう水筒がヴィヴィの手に渡る。
「おえっぎもぢわる、あんがと」
女四人旅で二人死んでるのなんなの。
「いや、いけると思ったんだ、最近は前より呑める様になってたから」
そう言って五分で撃沈してたエルフと十五分ゲラゲラ笑いながら轟沈したセイレーンは空になった水筒をラヴィさんに返しながら止まっては歩き止まっては歩きを繰り返す。
気持ち悪いんだろうな。
船酔いはまじで地獄だからな。
はっちゃけ過ぎ。




