勇者とウナギと(7)
「うま……」
二口、三口とスプーンが止まらねえ……。
チョップスティックが良かった感なくはないけどこの際それはいい。
ふんがふんが言いながらがっつく私を見てブラスちゃんも真似をし始めた。
一瞬抵抗があったみたいだが一口食べてから顔の色が変わった様に食べ始める。
「え、ブラスまで……そんなに美味しい?」
その問いかけにもスプーンを止める事なく首を縦に振りながらも食べる事を止めない。
そうして、ヴィヴィ、タリアさんと黙々と食べ始める。
「そ、そんなに言うんじゃ、私も」
イーマちゃんもとうとうスプーンに手を付け一口、また一口と進んでいく。
皆無口。
それを見て勇者君とレット君も漸くスプーンを持った、と同時に勇者君とレット君は互いに目を合わせて肩を落とす。
イーマちゃんが食べ始めるのを待っていたんだろうか。
なんだかんだ心配してるんだな。
嗚呼、山椒が欲しい。
全員の食事が終わった頃、ラヴィさんに皿が下げられた。
爪楊枝ほしい。
シーハーシーハー。
コホンと咳払い一つで勇者君が話始める。
「今回食べたウナギですけど、魔王軍の兵士でサーペントと言う名前で通ってました」
やべ、魔王軍の兵士食っちゃった。
魔王軍からしたら兵士を捕獲して食べるやべーやつらだな。
「そう言えば剣先団じゃないんだ?」
もしかしたら私にはウナギに見えてるだけで他の人達にはもっとおどろおどろしい化物に見えてるかもしれない。
「剣先団は人間を倒して自分達の力を誇示しようとしている集団です、魔王軍はもっと簡単で人類を滅ぼそうとしている集団です」
「思ったよりやべー奴」
やべー奴度合いで言ったらお互い、いい勝負するかもしれない。
「あの、お願いなんですけど、もしエナさんさえ良ければ……その……」
「ん?」
「私達のパーティーに参加して貰えないでしょうか」
勇者君のそのお誘いは魅力的ではある。
他の場所にいければ地球に帰れるかもしれないし。
もしかしたら魔王が私を帰す方法知ってるかもしれないし。
「私は反対よ!」
バンッ!とテーブルを叩いてイーマちゃんが立ち上がる。
「なんでだよ、さっきの戦い見ただろ、戦力としては申し分ない……」
「五月蝿いわね!あんた鼻の下伸ばしすぎなのよ!何よちょっと胸が大きいからって!」
カツカツと勇者君の前まで行って強烈なビンタ。
勇者君が三メートルぐらい吹っ飛んだ。
あーこれは首折れたな。
イーマちゃんはプンプンしながら食堂から出て行った。
「くっ首がっあっおい!イーマ!」
首の位置を修正しながら立ち上がって追いかけていく。
「すみません、我々はこれで、ほら、ブラス、いくぞ」
後の二人も先の二人を追いかけて出て行った。
「……青春してるなぁ」
「そ、そうだな、いや、お前が発端だぞ」
そういうタリアさんと見つめ合う。
私が何をしたと言うんだ。




