勇者とウナギと(6)
多分お風呂から出たらウナギの調理は終わってる頃だろう。
ウナギ美味しいかの山。
海だった。
「お腹空いたでしょ、ね、暖まったしそろそろ出ようよ」
嬉しそうに小さく頷く。
「で、勇者達の倒した三匹とお前の倒した一匹を騎士団で回収、お前の言っていた食う分を調達して来たわけだ」
「お腹一杯ウナギ食べたかったんですよ、最近はいい店だと特上のうな重とか四、五千円平気でしますからね、高い高い」
とは言え最初に王様から貰ったモンゴウを討伐した時のお金があるし王都での生活では金銭面では苦労はしていない。
しばらくは遊んで暮らせると思う。
遊んで暮らそう。
そう言えば愛用しているロッドの最新モデルがそろそろ出る時期なはずなんだけどこのお金地球に持って帰れないだろうか。
十万以上するんだよ、釣竿って案外高いんだぞ。
「一応ラヴィがお前の説明通りに調理したが」
「上手く刃が通らなくて大変でしたよ」
そう言いながらクロッシュを取り米に乗ったほぼ指示通りのうな重が出てくる。
タレを小指で掬って舐めるがほぼ理想の味だ。
この人は天才なんじゃないかな。
濃い味の甘い黒いタレとしか指示出してないぞ。
「皮目は流石に調達出来ませんでしたがほぼ指示通りの物が出来たと思います」
そう言って追加でカレーのルーいれるやつみたいなのに同じタレが入って前に置かれる。
このダークエルフうちにも一人欲しい。
ラヴィさんが全員の前に出し終わると食堂の入り口の所まで戻って静かにお辞儀をした。
「メイドさんって本当にいたんだ」
そういうイーマちゃんの呟きもわからんでもない。
どう見たってコスプレだし。
「い、いや、そうじゃなくて!これ食べて平気なんですか!?あのウネウネの怪物ですよねこれ!」
「日本人は大好物だから、ね、勇者君」
「そうですね、見た目も匂いもほぼ完璧だと思います」
「でも……」
納得出来なさそうなので率先して私が一口。
しっかりと炭火で二度焼きされてる。
最強。
「ラヴィさんと結婚したい」
「私のだぞ」
そういえばタリアさんのだった。
じゃあタリアさんと結婚すれば両方私のじゃん。
なんて。
鼻腔を抜ける香ばしい炭火の匂い、タレの甘さ、身の柔らかさ、完全に高級料理店のソレ。
一家に一人ダークエルフ。




