勇者とウナギと(5)
濡れた髪をかき上げていい女アピール。
シャツとジーパンもビショビショだ。
また王都で似たような服探さないと。
と言っても今着てるのも服屋に無理言って仕立てて貰ったオーダーメイドだけど。
やっぱりこのスタイルが楽でいい。
オシャレより機能性。
ブラスちゃんの手を取り起こす。
「怪我はない?」
ぽけーっと私の顔を見る。
すぐにハッとして手を振りほどかれた。
首が取れそうなぐらいに縦にブンブン振る。
「首痛めるよ」
それに心なしか顔が赤いような。
そこにタリアさん乱入。
「おい大丈夫か!化け物が暴れてると聞いて来たんだが……こいつが今日の夕飯か」
「察しがいいですね、でも近年は地球でも値上がりしてるし高級食材ですよ」
「それはいいが、まーた見知らぬ女に手出したのか、幼なじみに刺されろ」
洒落になってないからそれ。
刺されるどころか八つ裂きだわ。
「またってなんですか、私がいつ女の子に手出したって言うんですか」
「自覚がないのも罪だぞ」
「なんの話やねん」
そうこうしてると勇者君達が帰って来る。
無重力っぽい着地をした。
「大丈夫でしたか!?」
「大丈夫大丈夫、私が濡れただけだか……ら」
勇者君が私から目を反らしレット君もその後ろでコホンと咳払い。
イーマちゃんが私と勇者君の間に入った。
「む、胸!見えてます!」
「は?流石にノーブラじゃな……」
全身濡れた事で可愛げもない巨乳専用魔法ブラが透けていた。
こいつも特注品だ。
でけーと困るなあ全くよぉ。
館に戻ると男達とは別室でラヴィさんが着替えを揃えてお風呂まで準備してくれていた。
出来る女やで。
私と同じく濡れた女がもう一人。
「あ、あの、そんなにくっつかなくても、ね?」
シャワーを浴びていても入浴していてもブラスちゃんは離れてくれる気配がない。
なつかれたなぁ。
まあ嫌われるよりはいいけど。
というかなんで勇者チームはしれっと館まで来てるんだろう。
ただの釣りのつもりがえらいことになったな。
「私と一緒は……嫌?」
甘える様な声ですがりついてくる。
そんなにさっき助けたのがアレだったかな。
「嫌じゃないけど、こんなにくっついてたら洗いづらいよ、ね?」
一緒にお風呂入るのはいいとしても距離感はある。
蜜に殺される。
死神の足音が聞こえた気がした。




