勇者とウナギと(3)
「あ、そういえば自己紹介が遅れてたー、王様に聞いてるかも知れないけど私の名前はエナ、趣味は釣り、いつもこの辺にいるから、よろしくねーん?」
勇者君の後ろからレット君、だっけ?がパッと私の方へ駆け寄ってくる。
正確には海に向かって、だろう。
勇者君と何か話している。
「エナさーん!後ろ後ろ!」
勇者君の声に後ろ、つまり今進んでる方を見ると遥か遠くで津波の様なウネウネが見えた。
そういえばウネウネの都市伝説あったな。
違う違うそうじゃない。
ベーコンの泳ぎを一旦ストップ。
「……なんじゃあれ」
前回のウツボと同じ様にも見える。
だがサイズはあのウツボより小さい、数は三匹と言った所だが間違いなく長物系だ。
「なんだありゃ、海蛇か?」
ウツボより小さいと言ってもベーコンより大きいっぽい。
「ベーコン!バックバック!」
海蛇は泳ぐの遅いから速度だけならまだ間に合う。
まだ二十メートルも離れてないのでそのまま岸に戻った。
「何あれ?」
着地と同時にベーコンを瓶に戻す。
便利な事に頭から離れて手を挙げると勝手に光って瓶に戻り手に返って来る仕組みだ。
モンなんちゃらボール。
「レットが魔力を検知しました、恐らく魔王軍の者でしょう」
でかいな魔王軍。
「ですがお任せ下さい!我々がなんとかします!」
そう言ってスラッと剣を抜く。
「ホントに?じゃあお手並み拝見といこうかな」
何もしない、何もしたくないスタイル。
釣り出来る環境が戻ってくればいいや。
「行くぞ!二人とも!」
「二人?」
パーティーでハブは良くない。
「ブラスは戦闘力は殆どないんですよ」
「なるほどね」
レット君がなんかゴニョゴニョと唱えるとフワッと勇者君とイーマちゃんとレット君本人の体が浮いた。
「お、凄い」
「じゃあ、行ってきます!」
再びイーマちゃんに脇腹を小突かれながらも三人が海の方へと飛んで行った。
中々速い。
高所恐怖症的には多分無理なやつだわアレ。




