王都とウツボと(16)
私だけでいいとの事だったので荷物を文句たらたらのヴィヴィに任せて霊の騎士と供に城へ。
道中終始無言だった空気に耐えられず私から口を開いてしまった。
この能天気なおちゃらけた性格が憎い。
「えっとーあのー、この間はどうも」
「は、はいっ」
そんなに緊張されると私もやりづらいな。
私が英雄扱いされててビビってるのか、それとも私が偉い人達と縁があるからチクられると思ってビビってるのか。
まあ私はチクる時はチクる女だけど。
「あの、別にもう喧嘩しようとか赤ちゃん呼ばわりしようとか思ってないし、あんまりそういう態度取るのやめてもらえません?」
まあ私もイラっとしてその場の感情で馬鹿にしたのは間違いじゃないから責められない。
責める心があるとトコトンまで悪く言ってしまいそうでそれは私の悪い所だ。
反省。
それは親にも注意された事がある。
「す、すみません、そもそも女性と話す事自体慣れていないもので」
そっちかよ。
「そうですか、なら良かった、顔が結構可愛い系だからお姉様とか寄ってきそうな感じしてるけど」
「いえ、母や姉達との会話はありますが身内以外はあまり……」
「そ、そうですか」
堅いんだよなぁ。
まあ敵対心は無くなった様で良かったわ。
堅苦しいながらも細々と会話を続けながら城に到着、同時に若い騎士は王様に敬礼すると立ち並ぶ騎士達の列に戻った。
あら、デオさんおらんやん。
そう言えばタリアさんとデート中だったわ。
「すまないね、お休みの所」
王様の方から話しかけてきた。
「あ、いえ、大丈夫です、丁度帰ろうとしてた所なので」
「うむ、それで少し話したい事があるのだが」
「はい」
タリアさん抜きで王様と話すのは初めてだ。
失礼だけ無いようにしよう。
「このまま元の世界に帰る方法を探すのかね?」
「え、ええ一応、ハイドラの血があると帰れないって言うならそれを抜く方法を考えます、んで帰ります、向こうでやることがあるので」
いや釣りだけど。
「ふうむ、ではその方法が見つかるまで王都にいてくれぬか」
「それはこれ以上冒険に行くな、という事ですか?」
「絶対に全く出るなとは言わん、だが今の様に王都に居を構えて欲しい」
「それは何故?」
王都に血を抜く答えがあるならそれでもいいだろう、だけどもしまだ行ってない山とか洞窟とか知らない村とかにそれがある場合王都に籠っていたら帰りが遠退く。
「知っての通り、君は今や王都の英雄だ、このまま守護者としてここを守る砦になって貰いたい」
「いやいやいやいや、私ただの釣り人ですよ、しかも異世界人、そういうのは騎士の人達の仕事でしょ」
他人に任せると後悔するぞそういうの。




