王都とウツボと(12)
「まあでもさっさと行くかな、面倒は早く済ませるに限る」
何か面倒な話なんだろうか。
やっぱり愛の告白かな。
十年ぶりに帰ってきた憧れのお姉さんに告白とかどんな少女漫画よ。
きらいじゃないよ。
「じゃあな、晩飯楽しみにしてるぞ」
そう言って歩いて行ったので手をヒラヒラして適当に返す。
でもどうだろうな。
タリアさん私の事大好きだからな。
なんてな。
ボロっちくなって来たスライムを追加で練り直して針付け。
色々試したけどやっぱり地球製のワームよりこっちのが食いがいいみたいだ。
根魚系も釣りたいな、カサゴとか。
煮付けがうまい。
トロットロになるまで煮付けて白米と一緒にかきこみたい。
はーお腹空いてきた。
「だからぁ、あんたみたいなブスより私の方が可愛いって」
「何よあんた初対面の相手に対して失礼すぎるでしょ」
「ああーん?」
スライムの着水を確認した後ボケーっとしてたら背後から言い争う声が聞こえて振り返るとヴィヴィが知らない女の子と揉めながら歩いていた。
「あ!いた!エナ助けて!」
「どしたのー、揉め事はノーセンキュー」
戦いだってしたくないけど今回は仕方なく人命が掛かってたから戦いに繰り出されただけで本当は私は地球人で只の釣り人なんだから妖怪同士の揉め事は妖怪間で解決してほしい。
妖怪じゃなくてなんだっけ。
魔物だっけ?
忘れた。
というかヴィヴィの隣にいる女の子はピンクの髪でフリフリの服を来たプリプリプリンちゃんだった。
人間だ。
「こいつが急に絡んで来たのよ!私はいつもの日課で噴水前で歌ってただけ!」
デビュー前の歌手志望かよ。
大きな駅とかの前でギターケース開けて歌ってるやつ。
ヴィヴィの歌は一回聞いたが別に下手ではなかった。
というか上手い方。
下手なアイドルとかは余裕で越えてるレベル。
ただタリアさん曰く声に魔力が乗ってないからセイレーン特有の誘惑効果がないらしい。
ヴィヴィ本人は魔力ではなく歌の上手さを評価して欲しいからわざと魔力を乗せないと言っていたがタリアさん的には乗せ方が下手なだけだろと言っていた。
「ちょっとあんた!こいつの知り合い!?なんとかしてよ!私の方が可愛いでしょ!!」
そう言いながらグイグイくるお嬢様の顔が近い。
確かに小顔で身長も小柄で小動物的美少女の類いではあるだろうけど別にどっちの方が可愛いとかは……個人の好みとかあるし。
「さっきからこの調子なのよ、何人か私の歌を聞いてくれる人間がいるんだけどそれが気に食わないみたいで、だから助けて、あんた切り札でしょ」
「切り札切るの早くない?そういうのは最後まで取っておくもんだよ」
別に私はファッションとかそういうの興味ないしなぁ。
「あ、貴女名前は?」
「私の名前はパース、この王都で、いえ、この世界で一番可愛い女の子!」
キツいわ。
まだしおらしい部分がある分ヴィヴィのが……いや、グイグイ加減で言えば大差ないわ。
「用件は簡単!私の方が可愛いのにそこの青髪の鳥が私より目立ってるのが気に入らない!」
ド直球ストレートだな。




