王都とウツボと(8)
ラヴィさんが焼いた場所を見るとさっきまであったヌメヌメと分厚い皮が焼き魚になっていた。
ウツボはタタキかてんぷらがいい。
よっぽどな火力だったんだろう。
今度からラヴィさんには中華鍋を渡しておこう。
「ナマズの時と同じ感じでいけるかな」
ウツボを締める時は今立ってる辺りをバッツリ切るんだけど今持ってる刃物じゃそんな深くまではいけないだろう。
時間がない、さっさとヤっちゃおう。
「ここ、ぶち抜きますね!」
「はい、お任せします」
地面を殴るのって姿勢的にやりづらい。
だけど今は脳天の真上だから脳震盪ぐらいは起こせるかもしれない。
拳に全神経を集中。
「せー」
大きく振りかぶって。
「の!」
丸焦げの中心に向かって全力で拳を振り下ろす。
今までのハイドラモードの中でも最も力が出ていただろう。
ドン!という音と衝撃でウツボの体が殴った位置からくの字に曲がったかもしれない。
周辺の海にも大きな波紋を作る。
こうなってしまえばもうただのデッカイ魚よ。
元々デッカイ魚だった。
数秒ビクビクして動きが完全に止まった。
「止まったはいいけどこれどうすんですかね?」
「うーん、どうしましょうか」
あまりちんたらしてたら周りの魚介達も復活するかもしれない。
仮に出来たとしてもこれを大陸の反対側に押し返したらそっちの大陸が津波に襲われるサイズだ。
そして海のギャングウツボと言えば強すぎる生命力でお馴染み、何かするなら今しかない。
「何よ、いつもみたいに調理して食べればいいじゃない」
ちょっと避難していたヴィヴィが能天気にそんな事を言う。
そういうサイズじゃない。
「ふう、偉い目にあったな」
「ですなぁ」
タリアさんとデオさんがいつの間にか帰ってきた。
二人ともびしょびしょだ。
「どこ行ってたんですか?」
「ああ、こいつの体の至るところに封印式を貼って来た、動きも停めたみたいだし、このまま海中深くに封印してやるのさ」
「昔のリヴァイアサンの文献ではそうやって海の底に封印したらしいのでな」
いつの間に調べてたんだ。
というかいつの間にそんな準備をしていたんだろう。
「不思議そうな顔をしてるな、さっき吹っ飛ばされた時に王都の解読班から魔力通信が入ってな、私達も巻き込まれる前に王都に帰るぞ」
急にトントン拍子だな。




