王都とウツボと(7)
今までの傷の中では一番深い傷口だがすぐに再生が始まる。
そういう魔法でも掛かってるんだろうか。
それでも流石にダメージが通ったのか分からないが周りのエビタコイカを捲き込みながら大きく暴れた。
「どぅわ!滑るって!」
デオさんが私の襟をがっちり掴んで今の傷口に剣を刺して踏ん張る。
こりゃ津波が発生するぞ。
「ど、どうするんですかこれ!」
「む、援軍だ」
「へ?」
そう言われてデオさんと視線を合わせて上空を見ると見慣れた青い鳥に黒い人影がぶら下がっているのが見える。
「あれは……ヴィヴィとラヴィさん?」
空中で二つの影は別れて黒い方が私達の居る地点に急降下してきた。
「来るぞ!掴まれ!」
「へ?」
デオさんが剣を抜いてその場から距離を取る。
ラヴィさんが変わらぬメイド服のままさっきの傷口に直撃、同時に爆発した。
私はというとデオさんに手を離されて無情にも海に急降下。
海面に直撃する前に空中でヴィヴィが拾ってくれた。
「あんた泣いてんの?」
「泣いてねーし」
そういう台詞はラブコメかホームドラマのクライマックスで言いたかった。
両肩を大きな爪で鷲掴みされてる。
あれ、空モードって足そんなだったっけ。
本当に鳥みたいになってるじゃん。
「ってラヴィさんは!?」
人間爆弾もといダークエルフ爆弾はやばい。
非人道的過ぎる。
「ああ、大丈夫よ、火の精霊の魔法みたい、そう言ってたわ」
じゃあさっきのは爆発というか超強火だったのか。
ウツボはさっきより暴れ方が激しくなって来ている。
ヴィヴィに運ばれて再び頭上へ。
「ラヴィさん!」
そこにはいつもの様におしとやかにラヴィさんが立っていた。
無傷。
「傷口は焼いておきましたよ、これで再生も遅れさせられるでしょう」
そう言われて着弾地点を見ると確かにさっき掘った傷口が真っ黒に焦げていた。
再生もしてないように見える。
「ささ、今の内に」
「それはともかくタリアさんとデオさんは?」
「さあ、分かりかねますがあのお二方なら無事でしょう」
タリアさんてラヴィさんのご主人様だよね?




