第134話:君のいない世界の美しさ
「具合がよくないので、今日は学校を休みます」
怜は、メールを確認して、「了解」と返信すると、参考書に戻った。
メールは、カノジョである環からのものである。
時刻は朝まだ早き6時であるが、怜はすでに起きていた。
この頃では、少し早めに起きて勉強することが、すっかり習慣として定着していた。
習慣として定着しているので、あんまり考えなくなっているのだけれど、たまに、何でこんなことしているのかなあ、と考えることがある。朝早く起きて、好きでもない勉強をする。そういう努力は何のためか。
もちろん、高校に入るため、である。
しかし、そも高校に入るのは何のためなのか。
大学に入るため?
それは笑えない冗談のようにも思えるが、真実の一端だろう。両親は大学進学を望んでいるだろうし、怜にしても、高校卒業後の明確なビジョンがあるわけでもない。
明確なビジョン……。
人が生きて行くためにそういうものが必要だとどうして決まっているのか。
目的などなく、ただ海に漂うように生きることができない世の中だとしたら、それは大変な窮屈さである。
そういうことを身にしみるように感じることができるという点で、怜はまだまだ子どもだが、しかし、身にしみながらも、その窮屈さを引き受けて、生きて行くことができるという点では、十分に大人なのだった。
怜は、かりかり、と勉強を続けた。
返信に、「了解」とだけしか書かなかったのは、他に書くべきことなどないからである。
大丈夫か、とか、早くよくなれよ、なんてことは書かない。
大丈夫ではないから休むのだし、早くよくなるかどうかは彼女の体の自然の問題で、意志によってどうなるものでもない。
怜はシャープペンを置くと、学校カバンを整えた。
そうして、制服に着替えると、朝食の用意をしている母のキッチンへと行き、
「今日は、朝ごはんいらないよ」
と言って、そのまま議論を嫌うように、背を向けたが、そうは問屋がおろさなかった。
「ストップ」
怜は、ピタリと止まった。
母が前に回って来て、手を額に当ててくる。「熱は無いみたいね」
「ただ食欲が無いだけだよ」
「そんなことってあるの?」
長い人生をやっていれば、そんなこともあったはずだと思うが、母は忘れてしまったのだろう。
怜は親に抗弁するような不孝はせず、さあ、とだけ答えて、背を向けようとした。
「気分が悪いようだったら、休んでもいいのよ、学校」
「いや、気分は悪くないから……もし悪くなったら、保健室に行くか、早退するかするよ」
ここまで言って、母はようやく納得したらしく、気をつけてね、と言って息子を解放した。
怜が改めて玄関に向かおうとしたところで、どたどたと妹が階段を降りてきて、
「どうして起こしてくれなかったのよ!」
と母に向かって言ったあと、母からの、「ちゃんと起こしたわよ!」という応答があって、二人の言い合いが始まった。いつものことである。怜は、喧騒から離れるように、家を出た。
見上げた空の色は、真っ青である。
今日も暑くなりそうだ。
学校までの途上にカノジョの家があって、通り過ぎざまに、家を見てみたりしたが、それだけ。
学校までの道のりはやけに長く感じられた。
いつも環と一緒に登校しているわけではないが、一緒に登校しているときでなくても、彼女は登校しているわけで、そういうイメージを持てないことが、この道のりを長く感じさせているとしたら、それはどういうことになるだろうか。長く感じる道のりを歩いている間、怜は考えていたが、答えは、考えるまでもなく明らかなのだった。この道を一人で歩いていた時、というのが確実にあったことは、事実として認識しているのだけれど、心情としてはなかなか納得ができない。
「変な顔して、どうしたの?」
クラスに入ったところで、声をかけて来たのは、橋田鈴音だった。
「変な顔と言われても自分ではよく分からない」
「手鏡貸そうか?」
「それで自分の変な顔を確かめるのか? いや、やめとくよ」
「そこまで変じゃないよ」
「ありがとう。自分の顔に絶望せずにすんだよ」
「顔なんか体の前についていれば、それでいいじゃない」
「斬新な意見だな」
「賛成でしょ」
「ああ」
鈴音は、にやにやとしている。何もかも分かっているぞ、と言わんばかりの顔である。怜は、眉をひそめた。彼女は、そんな顔をしなくても、確かに何もかも分かっている子であって、それなのに、そういう顔をするということは、それを思い知らせてやろうという悪意……という言葉が強ければ茶目っ気に過ぎず、まあ、言葉を和らげたところで、性質の良い話ではない。
「今日、タマちゃん、お休みだってね」
「そうらしいな」
「知恵熱かな」
「知恵熱っていうのは、乳児の知恵がつく頃、一歳くらいの頃に出る熱のことだろ」
「そうなの?」
「知ってるだろ」
「今日初めて知ったよ」
「うそつけ」
「心外だな」
「じゃあ、ホントに知らなかったのか?」
「ううん、知ってた」
天真爛漫なふりの笑みを振りまかれては怒る気にもなれないし、もともと怒る気はない。
鈴音は、怜の机の上にお尻をおろすと、横から見下ろすようにしながら、お見舞いには行くの、と訊いてきた。
「タマキのか?」
「じゃなきゃ、誰の?」
「タマキは来てほしくないだろうな」
「そお? カレシから見舞ってほしくないなんてことあるかなあ」
鈴音はニヤニヤしながら言った。それは、彼女の可憐な顔立ちに似つかわしいものではなかったが、顔立ちが可憐だということも、似つかわしくないということも、どっちも言ってやるつもりはなかった。
「机から降りろよ」
「失礼」
「そうじゃない。もう授業が始まるから席につけってことだよ」
「わたしは行かないからね」
そっとお尻をずらすようにして、机から降りた鈴音は、自分の席に戻った。
担任が来て、学校での一日が始まった。
いつもと変わらない一日である。
みなよくもこれを正気でやっているものだ、と怜は感心してしまうことも、今はもうあまり無いのだけれど、今日そう思ったのはどういうわけか。こんなことまでカノジョの不在のせいにするわけにはいかない。
四時限分の授業をこなすと、給食の時間となった。
怜は、その日の給食をそっくりと残した。
周囲が食べているところで、ひとり食べないということは、バツの悪い思いには違いなかったが、そんな自分の思いなどに怜は頓着しなかった。クラスメートが不思議そうな顔でこちらを見ている中、怜は、文庫本で、読書などしていた。ぐうっとお腹が鳴ったようである。幸いに、周囲の歓談の声が、お腹の音をかき消してくれた。
午後にある体育の授業は、自主的に見学にした。朝食と昼食を抜いているので、激しい運動はしない方がいいかもしれない、という判断である。体育の授業は水泳で、プールサイドで、水着姿のクラスメートたちが水を弾かせる様を、体育座りをしてじっと見つめていた。
六時限目を終えて、掃除の時間になった。いつも一緒にゴミ捨てに歩いている女の子の、その足取りがいつもと違って軽やかである。何かいいことがあったのかもしれない。
部活動をせずに、学校を出る。空は相変わらずいい天気で、世界は美しい。いい天気でなくたって、世界は美しい。もしもそれを見る人がいなくてもそれは美しくて、その絶対性こそがその美しさの源であるなら、それは整然と残酷なことではないかと、怜は思った。
朝通った道を逆にたどり、家までの途上にあるカノジョの家のインターホンを押した。
名を告げると、門前まで小さな影が現れて、門の脇の通用口を開けてくれた。
「こんにちは、アサちゃん」
「こんにちは」
旭はしかつめらしい顔をして、ぺこりとお辞儀をした。
「お姉ちゃんの具合はどう?」
「えっと……大分いいです」
そう言って、旭は、地に足をつかせないような軽やかさで、客を玄関まで導いてくれた。
玄関に入ると、環の母が奥から現れて、挨拶してきたので、
「タマキさんのお見舞いに伺いました」
と言って、取り次ぎを頼むと、すでに取り次いでくれていたようである。上がるように言って来た。
「お加減、いかがですか?」
「もう大分いいのよ。お医者様で薬ももらってきたから。夏風邪ですって」
そう言って、環の母は廊下を歩き、階段を昇った。
怜は、そのあとを追った。
そう言えば環の部屋に入るのは初めてだったと気が付いたのは、入る直前のことである。
環の母がドアにノックをして、中から「どうぞ」と声がかけられて入室すると、ベッドの上に身を起こした環が、輝くばかりの笑みを投げて来た。何やらキナ臭いが、それは既に覚悟の上である。
怜は、ベッドのそばにある丸椅子に腰を下ろした。
室内は装飾を嫌うかのような簡素な造りで、きちんと整理整頓されている。
しかし、冷たい事務的な印象は受けない。
「いい部屋だな」
「ありがとう」
環の母が部屋を去り、ドアが閉められる。
「ごめん、タマキ」
「なあに?」
「お見舞いを忘れた」
「次に持って来てくださったら、それでいいです」
「お見舞いって、そういうもんか?」
「言い出したのは、わたしじゃないですよ」
なるほど、病気のハズである。キレがない。そう言ってやると、
「カレシを部屋に迎えて緊張しているっていう乙女心の可能性もあるでしょう?」
と返して来たので、
「可能性はなんにでもある」
怜は、環をじっと見つめた。
「どうしたんですか?」
「別にどうもしてない。ただ見てるだけだよ」
「普段もあんまり見られる顔じゃないんですから、やめてください」
「かといって、他に見るべきものもない」
「じゃあ、見つめ合いますか?」
そう言って、柔らかな微笑を口元に宿して、環は、その半月のような瞳を怜に向けた。
「なにもできないな」
怜が言うと、
「そんなことないです」
環が即座に否定した。
「だって、そうだろう」
「いいえ」
環は、ゆるやかに首を横に振った。
「ここにいてくれれば、もうそれで十分」
そう言って、自分の胸に手を置くようにする。
さらに、すばやく、
「帰って欲しいって言ってるわけじゃないですからね。念のため」
付け加えた。
席を立とうかと思っていた怜は、機先を制される格好になった。
「母が何か用意してくれますから、食べていってくださいね」
「なに?」
「朝からロクに食べてないんでしょう?」
「……スズに聞いたのか?」
鈴音にそんなことは話していないが、彼女ならそのくらいのこと、察するかもしれない。
「いいえ。聞かなくても分かります」
「なんで?」
「だって、立場が逆だったら、わたしがそうするから」
なるほど、環は鈴音の上を行っている。
そうして、この場合、上に行くと言っても、何ら褒められた話ではない。
「食べても食べなくても、病気とは何の関係もない」
「科学的にはそうかもしれないけれど、科学でロミオは作れないよ」
「オレはロミオになる気は無いよ」
「最後に死んじゃうからね。でも、バルコニーに向けての告白はステキ」
環は、その瞳をパチパチとさせた。
「冗談だろ?」
「それはレイくん次第だよ」
そのとき、折良く、お腹が、ぐうう、と一声うなりを上げた。
「タマキが病気でも、腹は減るな」
「当たり前です。人間はそんなにロマンチックにはできてないわ」
「霞を食べて生きるわけにはいかないのかな」
「仙人になりたいの、レイくん?」
「肉体があるって不便だからな」
「そうかもしれないけど、そんなに自在になっちゃったら、自分の中に自然を感じられなくなるんじゃないかな」
「それって、都合が悪いことか?」
「都合は悪くないかもしれないけれど、ただ、つまらないと思うよ」
なるほど、と怜は、感心した。
そうして、体調が優れなくても、自分よりよほど優れていると、確認した。
環は、母親に食事の用意をお願いしてある、と言い出した。
「家で食べるよ」
「ここで食べていってほしいんです。本当はわたしが作りたかったくらい」
身から出た錆だろう。怜は観念した。「……分かった」
「よかった」
ここでというのが、文字どおりの「ここ」、つまり環の部屋であるということが分かったのは、それから、十五分ほどしてのことである。部屋のドアがノックされて、環の母が、盆を携えて現れた。盆の上には料理が載せられている。
「ありあわせのものですけれど、どうぞ」
環の母が笑顔で言う。
ありがとうございます、と怜は答えるしかない。
食べていると幸せな気持ちになって来た。
食べられない人の前で食べるのもなんだけれど、その人のリクエストであるので、どうにもである。
環は、微笑んでいる。
怜は、ゆっくりと箸を使った。
食器の音だけが、夏の夕暮れに、ひそやかである。
「うまいな」
「母の料理は絶品です。悔しいけれど」
「何も悔しがることはないだろう。お母さんにはキャリアがある」
「料理って想像性が無いから好きじゃないんです」
「決められた手順を決められた通りにやるだけだから、だろ」
「病気になると優しくしてくれるのね」
「心外だな」
「ずっと病気でいようかな」
「タマキと登校できないのは寂しい」
「ほら、また」
「本心だよ」
「本当ですか?」
そう訊く声は溌溂としているが、そう見せている、いや聞かせているだけかもしれないので、油断はできない。
「昨日、クラスメートに、タマキと何を話しているのか、訊かれたよ」
「なんて答えたの?」
「森羅万象に関してって」
「それを聞いて、その人なんて?」
「感心してくれているみたいだった」
「いい人だね」
「そうだろうな」
「カノジョの前で、他の女の子を褒めないこと」
「どうして?」
「病気の女の子に振る話はもっと選んでください。楽しいものにしてください」
「ご趣味は?」
「プロポーズなら、OKするから、途中は全部省略してね」
「明日学校に来られなかったら、オレも休もうかな」
「休んでどうするんですか?」
「また見舞いに来るさ」
「ステキ。やっぱりずっと病気でいよう」
「好きにすればいいよ」
環は微笑むと、口を閉じた。
怜は、食べることに集中した。間もなく食べ終わると、まるで図ったようなタイミングで、ドアにノックの音がして、環の母が現れた。食後のお茶を持っているようである。怜は恐縮して、紅茶を受け取ると、環の母はすぐに退場した。紅茶をすすって、口の中を芳しくさせると、環の視線を感じる。
「なにか変なものでもついているか?」
「ソースがついてる」
そう言って、環は、ちょんちょんと自分の口元を指した。
怜は、かばんからティッシュを取り出すと、口周りを綺麗にした。「失礼」
「いえいえ」
「まだ何かついているか?」
「いいえ」
「でも、こっちを見てる」
「他に見るものもありませんので」
「じゃあ、見つめ合おう」
「はい」
そうして、本当に見つめ合ったわけだけれど、環の瞳は、まるで夜空のようである。もちろん、そんなことは口に出して言わなかったが、言わなかったのは、彼女の増長を許さないためではなく、単に詩心に欠けているからだった。それ以外の理由は無い。
紅茶を飲み干したあと、怜は立ち上がった。「見送りはいらないぞ」
「いいえ、します。お見舞いに来ていただいた方を、床で見送っては、沽券に関わりますので」
「そういうもんか?」
「そういうものです」
「足元がおぼつかないだろ」
「支えてくれるんでしょう?」
環は、優雅な様子で、手を差し出した。
怜は、その手をそっと取った。
重ねられた彼女の手が、少し汗ばんでいるようである。
「何だか、オレが連れ出しているみたいだなあ」
「誰もそんなこと思いません」
怜は、環の手を引いて彼女をベッドから立たせると、そのまま手を取りながら、廊下へと導いた。階段は、手をつないだまま降りるわけにいかないので、手を離したが、しかし、階段を降りたところで、すぐに手が取られた。
「玄関までそれほどはかからないけど」
「だから?」
環は、挑戦的な目で微笑んだ。
その挑戦を、怜は受けなかった。
そのまま手を取って、玄関まで赴いたところで、奥から環の母が、お帰りですか、と声をかけて来た。
怜は、環の手を離すと、夕飯の礼を言った。
「お構いもしませ――」
環の母が愛想よく言い出したところで、バタバタと廊下を駆ける音がして、旭が現れた。
「レイ!」
「はい」
怜は愛想のよい声を出した。普段出さない声である。カノジョからの視線が痛いような気がするが、それは、こちらの問題ではないだろう。いや、どうなのか分からないけれど、してしまったことはどうしようもない。
「もう帰っちゃうのぉ!?」
冗談はやめろ、という調子である。しかし、怜がうなずくと、
「ずるい!」
金切り声に近い声が上がった。
「え?」
「お姉ちゃんには会いに来てくれるのに、わたしには全然会いに来てくれないんだもん!」
環に会いにこの家に来たことなど数えるほどしかないのだけれど、それでも、確かに旭の言う通りであるので、何とも抗弁のしようがない。
旭は、アヒルのように口を突き出すと、目に悲しげな色を浮かべた。
「この頃、この顔にみんな負けちゃってるの。特にお父さんがなのは言うまでもないよね」
環の耳打ちに、怜はうなずいた。
そうして、膝を折って、毅然とした顔で、旭に真向かうと、
「今度は、アサちゃんに会いに来るよ」
と優しげな声を出して、環に天を仰がせた。
「やったあ!」
泣き出しそうだった顔は、見事に晴れ上がったようである。
立ち上がった怜は、ふう、と吐息をついている環に、
「仕方ないだろう、この場合。逆にどうしてオレなら勝てると思ったんだ」
訊いた。
「努力してくれるだけでも嬉しいんだけど」
「無駄な努力はしない主義なんだ」
「初めて知ったわ」
「今持つことにしたんだよ」
怜は、微笑みを浮かべている環の母に、もう一度礼を言うと、靴を履いた。
外に出ると、西の空に雲が出ていて、夕陽に赤く染められていた。
玄関のドアが、ぱたん、と閉まる。
「明日は迎えに来なくていいよ、レイくん。わたしが迎えに行くから」
環がおかしなことを言い出した。
「遠回りになるだろ」
「遠回りにはならない。学校には行かないから」
「オレにも学校サボらせる気か?」
「そうだって言ったら」
「助かるね。サボリを、タマキに誘われたからだって、言い訳ができる」
「明日、土曜日よ」
「なるほど」
おかしかったのは自分の方だったと、対彼女との関係では、今さら考えるまでもない事実を、怜は、確かめた。
「どこか行きたいの。今日ずっと家に閉じこもっていたから」
「いいよ」
環は微笑んだ。「やっぱり、ちょくちょく病気になろうかな」
怜も笑った。「人はそれを仮病と言う」
「いけないこと?」
「いや、本当の病気よりずっといいさ」
「よかった」
怜は、玄関の前に環を残して、歩き出した。
少しして振り向くと、彼女が手を振っている。
その手に、手を振り返して、また歩き出す。
もう一度振り返って、怜は、自分の手を突き出すように、少し離れたところにいる彼女に向けた。
環は、こちらに歩き出そうとしていた。
「ストップ!」
環は、門までだよ、という意で、門の方を指差したようだが、怜は首を横に振った。
環は、分かった、という意味合いだろう――それ以外の意味があるとは考えたくない――両手を軽く広げるようにした。そうして、後ろ姿を見せると、玄関のドアを開いて家の中に戻った。
安心した怜は、カノジョの家の門の通用口を抜けた。